ほとんどの企業が女性社員を抱えている今、女性のヘルスケアについて理解を深められていますか。女性の労働力は企業にとって大きなインパクトをもち、その活用は企業の成長に不可欠です。
では、女性が健やかに働ける企業づくりには、何が必要なのでしょうか。今回は、産婦人科医である三輪綾子先生に、女性のヘルスケアと日本の企業に求められることについてお話を伺います。
ほとんどの企業が女性社員を抱えている今、女性のヘルスケアについて理解を深められていますか。女性の労働力は企業にとって大きなインパクトをもち、その活用は企業の成長に不可欠です。
では、女性が健やかに働ける企業づくりには、何が必要なのでしょうか。今回は、産婦人科医である三輪綾子先生に、女性のヘルスケアと日本の企業に求められることについてお話を伺います。
世界的に見ても、日本は女性のヘルスケアへの取り組みがかなり遅れています。それは、日本社会が長らく女性の健康問題を取り上げてこなかったこと、目を向けてこなかったことが原因です。
近年、働き方改革の視点から徐々にメスが入り始めましたが、女性のヘルスケアについては、まだまだ女性自身に任されている部分が大きいと感じます。
しかし、正しいリテラシーがない状態では、自分でケアすることは困難です。そこで、社会で活躍する女性のヘルスケアには、企業によるアプローチが欠かせません。
例えば、頭痛や腹痛があったとして、病院に行くために仕事を休むことのハードルの高さは男女共に感じているでしょう。
女性には、そういった機会が月に1度訪れますが、相談先がわからず、とりあえず我慢して過ごしてしまう女性がとても多いのです。
そういった女性をケアできるのは、企業だと思っています。具体的には、病院を受診する時間を設けてあげたり、受診の判断に役立つリテラシーを育てたり、様々なアプローチがあります。もちろん産業医の中にも、女性の悩みに答えられる人もいると思うので、正しい知識を持つ専門家につなげることも有効です。
女性のヘルスケアについて、理解を示そうとする姿勢の経営層の方は多くいらっしゃいます。ただ、何から取り組めば良いか分からない方が多いのも事実です。
経営者の方々は、まず「理解する」ところから始めてみてはいかがでしょうか。課題が分からなければ、解決は難しいですよね。
一方で、いきなり全てを「理解する」ことは難しいと思います。まずは会社にいる女性社員への理解を深めましょう。例えば、社内に40?50代の女性が多いのであれば、更年期についての知識をインプットした方が良いですし、20代が多いのであれば子宮頸がんについて学ぶことも重要です。
第一に身の周りを見渡して、どういった課題を抱えている女性が多いのかを考えてみましょう。
いざ女性のヘルスケアに目を向けてみると、生理や子宮頸がんに限らず、妊活や不妊治療、更年期など様々な課題が浮き彫りになるはずです。女性の健康課題は本当に多岐にわたります。ライフステージに合わせた悩みや心配ごとに対応できる場所をつくることが、安心して働ける環境につながると考えています。
中には、悩みを抱えながらも我慢して出勤している人もいるでしょう。誰からも申告がない場合、「全員が健康」と捉えるのではなく、社員が抱えている悩みを汲めていない可能性が高いです。
多くの女性にとって、悩みの種となっている生理。そして、生理によって勤務が難しい女性のために用意されているのが、生理休暇という制度です。しかし、日本では生理休暇の取得率は極めて低いのが実態です。
原因としては、「周りが取っていないから取りづらい」という心理や、取ったとしても実際は「取得して終わり」となり、継続的な制度活用につながらないのではないかと思います。
生理休暇を「辛いから休む」だけで考えてしまうと、どうしても遠慮してしまう女性が多いのです。生理休暇は「月に一度治療に充てる時間」や「産婦人科を受診する日」として前向きに捉えることができれば、周りの理解も得やすくなると思います。
そのためにも、「生理で産婦人科を受診する」という選択肢をそもそも女性がもっているかどうかが重要であり、ヘルスリテラシーが問われるのです。
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子宮頸がんの原因となるのはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスであり、これについて健診で異常が見つかると、正常化するまで3ヶ月に1度のペースで検査に通わなくてはなりません。頻繁に仕事を休んだり通院の時間を確保する必要も出てきます。
注目すべき点は、HPVへの感染はワクチンで一定回避できるということです。私自身プロジェクトリーダーを務める「Qプロジェクト」では、防げるがんで苦しむ人を無くしたいという考えのもと、子宮頸がんワクチンの接種を推進しています。
HPVは男性も感染するウイルスであり、女性だけの問題ではありません。最近では、男性の方もご自身やパートナーのためにワクチンを接種する方が増えてきています。
▼参考資料はコチラ
Qプロジェクト|女性が「我慢しない」社会へ
悩みまでいかない心配ごとや受診までには至らない小さなモヤモヤなど、どういった時に相談すべきか判断が難しいという声を多く聞きます。
本当は他人と比べる必要はなく、辛いと感じたときに病院に行けばいいのです。しかし、日本人の気質なのか「あの子の方が我慢しているのに私が病院に行ってもいいのか」、「先輩たちは仕事を休んでこなかったのに自分は休んでいいのか」と、空気を読もうとする風潮が染み付いています。
だからこそ、リテラシーを高めることで一定の受診の目安を示してあげることは、企業の役目として重要だと思います。
多くの企業が産業医を導入していると思いますが、ドクターにも得意分野はあるので、担当の産業医が産婦人科専門でなかった場合は、産婦人科の先生につなげてもらうのも良いでしょう。
「産婦人科に行ってください」と言うだけでは、1から病院を探さなくてはならずハードルが上がってしまいます。そのため担当の産業医以外にも、それぞれの領域で何名か医師の候補や繋がりがあると、受診までスムーズにつなげられるのではないかと思います。
産業医をヘルスケアに向き合う入り口として、そこから受診に繋げるという流れを目指せると良いですね。
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今後、女性が自身の健康について話すことがタブーにならないような、ヘルスケアに対してオープンな会社がどんどん増えていくと良いなと思います。特に上の立場に立つ人は、そういった話題について積極的に話すことを恐れないスタンスでいることも大切です。
ヘルスケアにオープンな環境をつくることができれば、結果的に従業員はより長く働いてくれますし、自分の能力を最大限発揮できるようになるでしょう。そういった企業こそが持続し、外から見ても魅力的に映ることは疑う余地もありません。
この先の未来、女性の労働力なしでは、企業が力を伸ばしていくことは難しいでしょう。つまり、企業が女性の労働力を活用しない手はないのです。そういった面からも、女性がパフォーマンスを十分に発揮できる環境を整えることは、企業にとってプラスになることが多いと思います。
人を雇ううえで、ヘルスケアは無視できない議題です。目をそらさずに、一歩ずつ取り組んでいきましょう。
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