特定の果物を食べて、唇や口の中などがかゆくなったり、痛くなったりしたことはありませんか? それはもしかしたら、食物アレルギーの一種「口腔アレルギー症候群」かもしれません。今回は、果物を食べた際に起こる口腔アレルギー症候群について、花粉症との関係にも触れながら解説します。
果物アレルギーと花粉症の意外な関係
- 健康情報
果物を食べると口の中がかゆくなる「口腔アレルギー症候群」
食物アレルギーの原因として鶏卵や牛乳、小麦などがよく知られていますが、近年、果物によるアレルギー症状を訴える人が増えているといいます。
果物アレルギーは、「即時型」と「口腔アレルギー症候群」に大きく分けられます。
即時型は、原因となる果物を摂取してから2時間以内に、皮膚や粘膜、消化器、呼吸器などに症状が現れます。特に乳幼児に多くみられ、成長するにつれて治る場合もあります。
一方、口腔アレルギー症候群は食後5分以内に症状が現れることが多く、唇や口の中、のど、耳の奥などがかゆくなったり、痛くなったりします。幼児から大人にかけて幅広い年代にみられます。
■即時型果物アレルギーと口腔アレルギー症候群の特徴
即時型果物アレルギー | 口腔アレルギー症候群 | |
---|---|---|
発症年齢 | 乳児?大人 | 幼児?大人 |
主な症状 | 皮膚かゆみ・赤み、じんましん、目の充血・かゆみ、まぶたの腫れ、口・のどの中の違和感、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、せき、腹痛、吐き気、下痢など | 唇・口の中・のど・耳の奥のかゆみや痛みなど |
症状が現れる時間 | 食後2時間以内(多くは30分以内) | 食後5分以内のことが多い |
果物のたんぱく質が花粉症のアレルゲンと似ている
口腔アレルギー症候群は花粉症の人に多いとされ、花粉症患者の増加に伴い、口腔アレルギー症候群の患者も増加傾向にあるといわれています。アレルギーの原因となるたんぱく質を「アレルゲン」といいますが、果物や野菜には、花粉症のアレルゲンと似た構造のたんぱく質が含まれている場合があります。こうした果物や野菜を花粉症の人が口にすると、体が花粉のアレルゲンと似ていると認識し、アレルギー症状が現れると考えられています。
例えば、りんごやももなどのバラ科の果物にはシラカンバやハンノキのアレルゲンと似た構造のたんぱく質が含まれているため、北海道に多いシラカンバ花粉症の人は、りんごやももなどを食べると唇や口の中がかゆくなったり、痛くなったりする可能性があります。
■主な花粉とアレルゲンの構造が似ている果物・野菜など
花粉 | 果物・野菜など |
---|---|
カバノキ科 シラカンバ ハンノキ オオバヤシャブシ |
バラ科(りんご、西洋なし、さくらんぼ、もも、すもも、あんず、アーモンド) セリ科(セロリ、にんじん) ナス科(じゃがいも) マメ科(大豆、ピーナッツ) マタタビ科(キウイフルーツ) カバノキ科(ヘーゼルナッツ) ウルシ科(マンゴー) ししとうがらし など |
ヒノキ科 スギ |
ナス科(トマト) |
イネ科 |
ウリ科(メロン、すいか) ナス科(トマト、じゃがいも) マタタビ科(キウイフルーツ) ミカン科(オレンジ) マメ科(ピーナッツ) など |
キク科 ヨモギ |
セリ科(セロリ、にんじん) ウルシ科(マンゴー) スパイス など |
キク科 ブタクサ |
ウリ科(メロン、すいか、カンタロープ※、ズッキーニ、きゅうり) バショウ科(バナナ) など |
※カンタロープ:赤肉種のマスクメロン
▼出典
日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン 2016」
多くは軽症だが、気になる場合は受診を
口腔アレルギー症候群の原因となる果物や野菜のアレルゲンは熱に弱く、多くの場合、加熱加工されたジャムやジュース、缶詰などを摂取しても症状は出ません。また、アレルゲンは消化酵素に弱く胃腸で分解されるので、通常は軽い症状で済みます。しかし、一度に大量に摂取したときなどは全身症状が誘発される場合があるので、気になる症状がある人は、医療機関で果物や野菜にアレルギーがあるか調べてもらうと安心でしょう。
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