「お酒が飲みたくて仕方がない」「お酒が抜けると手指がふるえる」といった症状があったらアルコール依存症かもしれません。
今回は、アルコール依存症の診断基準や治療法、アルコール依存症から身を守るための飲酒のルールを紹介します。
アルコール依存症の診断基準とは? 治療法や適正飲酒量を解説
- 健康情報
アルコール依存症とは
長期間多量に飲酒した結果、アルコールに対し精神依存や身体依存をきたす精神疾患のことです。長期間多量に飲酒をすれば誰でもアルコール依存症になる可能性があります。アルコール依存症は個人の性格や意志の問題ではなく、精神疾患と考えられています。症状には、精神依存と身体依存とがあります。
精神依存は「飲酒したいという強烈な欲求(渇望)がわきおこる」「飲酒のコントロールがきかず節酒ができない」「飲酒やそれからの回復に1日の大部分の時間を消費し、飲酒以外の娯楽を無視する」「精神的身体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒しない」などが挙げられます。
身体依存は「アルコールが体から抜けてくると手指のふるえや発汗などの離脱症状(禁断症状)が出現する」「以前と比べて酔うために必要な酒量が増える」などが挙げられます。
アルコール依存症の診断基準
次の6項目のうち3項目があてはまればアルコール依存症と診断されます。(ICD-10)
- 激しい飲酒渇望
- 飲酒コントロールの喪失
- 離脱症状
- 耐性の証拠
- 飲酒中心の生活、飲酒行動に時間がかかる
- 問題があるにもかかわらず飲酒する
アルコール依存症への対応
アルコール依存症から回復するために最もよい方法は、「断酒」=一滴も飲まないことです。 アルコール依存症とは、飲酒がコントロールできない病気です。コントロールできないのに、量や回数を減らそうとしても、しばらく経つうちにまたもとの飲み方に戻ってしまうことが非常に多いです。さらに断酒を難しくしているのは、断酒には期限がないということです。たとえ数年間全く飲酒しなかったとしても、また飲み始めるとたちまちもとの飲み方に戻ってしまいます。長年かけて作り出された依存症の脳の回路は、しばらく酒を止めたことで消えてなくなるわけではないのです。
飲んでいる間は、断酒することはとても無理なことのように思えます。そして多くの依存症者は断酒を試みることをしません。その原因のひとつは、「否認」という心の働きにあります。否認とは、飲酒の問題があることを認めないことです。
自分で飲酒問題に気づくため、専門医療期間への受診やAA(Alcoholics Anonymous)や断酒会といった自助グループへの参加が回復を助けます。独りの力では難しくても、自助グループに参加して仲間と一緒に断酒していくということは、断酒を続けるための大きな力になります。
アルコール依存症の薬物療法
アルコール依存症の治療薬として、わが国で承認されている薬は2021年6月現在4種類あります。抗酒薬(ジスルフィラム・シアナミド)とアカンプロサートは断酒維持のための薬であり、ナルメフェンは飲酒量低減のための薬です。抗酒薬は「飲酒すると気持ち悪くなる」もので、心理的に飲酒を断念する薬です。アカンプロサートは、飲酒欲求を減らして断酒を補助する薬です。ナルメフェンは2019年3月に発売された新しい薬剤で、飲酒量を低減させる効果があります。新しい治療ガイドラインでは、軽度の依存症や中間的な目標として減酒の選択もあり得ると言及されています。薬物療法だけでなく、他の心理・社会的な治療、自助グループへの参加と組み合わせることが、効果を最大限に得るために重要です。
1日の適正飲酒量はどのくらい?
厚生労働省は「健康日本21」の中で
「節度ある適度な飲酒」を「1日平均
純アルコールで20g程度」と定義して
います。20gとは大体、右図の量です。
アルコール依存症から身体を守るための飲酒ルール
健康を守るために、以下のことに気を付けていただければと思います。
女性・高齢者・赤型体質の方は少なめに
女性は男性に比べて臓器障害を起こしやすいと言われています。また、ビールコップ一杯で顔が赤くなる方は「赤型体質」と言われており、食道や咽頭の発癌リスクや臓器障害のリスクが高いといわれています。
食事と一緒にゆっくりと
空腹時に飲んだり一気に飲んだりすると、アルコールの血中濃度が急速に上がり、急性アルコール中毒を引き起こします。身体を守るためにも濃い酒は薄めて飲むようにしましょう。
寝酒は極力控える
寝酒(眠りを助けるための飲酒)は、睡眠を浅くします。
週に2日は休肝日
週に2日は肝臓をアルコールから開放してやりましょう。そうすることで依存も予防できます。
入浴・運動前はノーアルコール
飲酒後に入浴や運動をすると、不整脈や血圧の変動を起こすことがあり危険です。
定期的に検診を
定期的に肝機能検査などを受けて、飲み過ぎていないかチェックしましょう。飲酒習慣のある方は、食道や大腸のがん検診を受けましょう。
【イラスト】清水杏里
<参考文献>
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