強迫性障害とは、強い「不安」や「こだわり」があり、何度も同じ行為を繰り返したり、一つの考えが頭から離れず、日常生活に支障が出てしまう病気です。
世界保健機関(World Health Organization:WHO)で「生活上の機能障害をひきおこす10大疾患」のひとつにあげられています。思春期の後半や成人期の初期に発症しやすく、成人の40人に1人にみられる疾患です。
自分でも「ばからしい」と思ってもやめられないことが特徴で、症状は「強迫観念」と「強迫行為」にわけられます
ある考えが頭に浮かび、その考えが頭から離れなくなります。
不安にかきたてられて、ある行動ををしないではいられず、何度も繰り返します。手の洗浄や戸締りの確認などがあります。
以下に、代表的な強迫観念と強迫行為の例を挙げます。
強迫観念と強迫行為の例 |
不潔恐怖と洗浄 |
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い・入浴・洗濯を繰り返したり、ドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを触れない
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加害恐怖 |
「誰かに危害を加えたかもしれない」という不安が頭から離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する
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確認行為 |
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認する
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儀式行為 |
「自分の決めた手順でものごとを行わないと、恐ろしいことが起きる」という不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない
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強迫行為の例
戸締りの確認をしに家に戻ったり、清潔のために手を頻繁に洗うことは誰にでもあると思います。「少し神経質なだけ」なのか、「ちょっと行き過ぎか」という判断は難しいところです。
不安や確認が強すぎて、何度繰り返しても安心できず、辛さを感じたり、時間をとられて約束や仕事に遅れてしまうなど、生活に支障がでている場合は「強迫性障害」かもしれません。
また、家族に火や戸締まりの確認を何度もさせたり、アルコール消毒を強要したりするなど、周囲の人を強迫観念に「巻き込む」という症状もあります。
その結果、周囲の人が疲弊してしまいます。自分では「病気というほどひどくない」と感じていても、家族や友人など周囲の人が困っているようなら、受診を考えてください。
強迫性障害の原因ははっきりと特定されていませんが、もともとの性格に加えて、脳の神経伝達物質の調節障害や、脳のある部分の活動性の異常が影響していると言われています。また、ストレスや感染症など、様々な要因も関係しています。治療には、「認知行動療法」と「薬物療法」を組み合わせることが効果的です。
・認知行動療法
「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」が代表的な治療法です。「わざと不安を起こすような状況に患者さんをさらし、不安に耐えて、強迫行為をしないで我慢する」ことで、徐々に不安が下がっていくという行動療法です。
たとえば、「汚いと思うものを触って、手を洗わずに我慢する」「外出した後は施錠を確認するために戻らないで我慢する」などです。こうした課題を続けていくと、不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても済むようになります。
・薬物療法
抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)が効果があります。うつ病の方に使うよりも高用量で、長期間の服薬が必要です。副作用など不安がある場合には、主治医とご相談ください。