就寝前の飲酒や喫煙は、睡眠の質を下げてしまいます。アルコールは一時的に眠くなりますが、睡眠が浅くなり、途中で起きてしまうため、熟睡感が得られにくくなります。また、徐々に体が慣れてお酒の量が増えてしまいます。睡眠薬代わりに寝酒を飲む方は控えた方がいいでしょう。
また、ニコチンは覚醒作用があるため、就寝前に喫煙すると寝付きにくくなり、睡眠を浅くします。
カフェインは、コーヒー、緑茶、紅茶、ココア、栄養・健康ドリンク剤などに含まれていますが、就寝前 3~4 時間以内に摂取すると、眠りを浅くします。カフェインには覚醒効果のほかに尿を作る作用もあり、夜中にトイレに行きたくなって目が覚める原因にもなります。
寝床に入ってから携帯電話、SNSやゲームなどに熱中すると、光の刺激で目が覚めてしまい、夜更かしの原因にもなるので、注意が必要です。
一度不眠を経験すると、心配になって早くから寝床に就こうとしがちですが、早く寝床に就くと、かえって寝つきが悪くなります。就床時刻はあくまで目安ですので、その日の眠気に応じて「眠くなってから寝床に就く」ことがスムーズに眠る近道です。
睡眠中の心身の変化には、専門的な治療を要する病気が隠れていることがあります。
うつ病の方は、「寝つきが悪く、早朝に目が覚めたり、睡眠中に何度も目が覚める」などの不眠症状が9割近くの方に出るとされています。
また、不眠症の人は、うつ病になりやすいといわれています。うつ病に限らず、睡眠時間が不足していたり、不眠症のため寝床についても眠れなかったりして、睡眠による休養感が得られなくなると、日中の注意力や集中力の低下、頭痛やその他のからだの痛みや消化器系の不調などが現れ、意欲が低下することが分かっています。
日中の眠気を引き起こす病気に「睡眠時無呼吸症候群」があります。
「睡眠中に大きないびきをかく、時々呼吸が止まっている」方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。男性で約9%、女 性で約3%いるとされており、中等度以上の睡眠時無呼吸症候群の方は、「5 年間の複数回の事故経験」が約 2.4 倍であることが示されています。適切に治療を行うと、眠気が改善し、事故の発生率も低下します。
就寝時の足のむずむず感や熱感は、「レストレスレッグス症候群」の可能性があります。また、睡眠中の手足のぴくつきは「周期性四肢運動障害」の可能性があります。これらの病気があると、眠っても休息感が得られず、日中に眠気がでることがあります。
また、夜眠っていても、日中の強い眠気や居眠りがある場合は、「ナルコレプシー」などの過眠症の可能性があります。
いずれも治療すれば改善可能な病気ですので、ご自身や身の回りの方が当てはまるかもしれないと思った際には、必ず専門医に相談するようにしてください。