非常に疲れやすくなったり、急な体重の増減、うつ病のように落ち込みがちだったり。さまざまな不快症状が出るのは、もしかすると甲状腺の病気が原因かもしれません。甲状腺の病気は女性の患者さまが多く、専門医でないと診断が難しい場合があります。思い当たる症状があれば、まずはお近くの内科を受診しましょう。
女性に多い甲状腺の病気とは?原因や症状について解説
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甲状腺の病気は主に3種類。原因や症状について
甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌する臓器で、首の中心、ノドボトケの下あたりにあり、チョウチョが羽を広げたような形をしています。正常な場合は触ってもわかりません。それゆえに専門医でさえ触診だけでは判断しづらいため、甲状腺ホルモン値や自己抗体、エコーなどで診断します。甲状腺は、新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌する働きを持つ、いわば「元気を出すホルモン」を作る場所。主な病気は「異常」「腫瘍」「炎症」の3つですが、いずれも早期発見治療できれば怖くはない病気です。
1.甲状腺機能(ホルモン値)の異常が原因の病気
◆甲状腺機能亢進症
甲状腺の機能が亢進(こうしん)してホルモンの分泌が過剰になる状態で、そのほとんどはバセドウ病です。20?30代の若い女性に多く、男女比は1:4。主な症状は、1分間に100回を超える頻脈、動悸、急な体重減少、やたらと元気、喉(甲状腺)の腫れ、まれに眼球が飛び出したように見えることです。
バセドウ病の明確な原因はわかっていませんが、バセドウ病になりやすい体質を持っている人が何らかのウイルス感染や強いストレス、妊娠・出産などをきっかけとして起こるのではないかと考えられています。一旦寛解しても再発率が高いことが特徴であり、長期にわたる治療が必要となります。
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日本内分泌学会「バセドウ病」
◆甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が足りなくなる状態で、主に橋本病と呼ばれますが、その約半数は治療不要です。中年女性に多く、ホルモン値が低下しすぎるとむくみやだるさ、無気力など、うつ病と似たような症状が出ます。バセドウ病も橋本病も主な原因は自己免疫疾患と考えられています。
甲状腺ホルモンは、代謝の調節以外にも妊娠や胎児の成長・発達にとって重要なホルモンです。そのため、女性の場合月経異常や不妊、流産・早産や胎児の成長や発達の遅れなどにつながる恐れがあります。
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日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」
2.甲状腺の腫瘍が原因の病気
甲状腺の腫瘍のほとんどが特に治療の必要のない良性ですが、まれに悪性の場合があります。
小さい甲状腺腫瘍の場合、自覚症状はほとんどありませんが、腫瘍が大きくなると、首の腫れやしこりが目立ち、ものを飲み込む時に違和感を感じることがあります。
良性か悪性かは専門医に診断してもらいましょう。
◆検査の普及により甲状腺腫瘍の発見が増加
以前と比べると、甲状腺腫瘍は1cm以下の微小なものが多く発見されるようになりました。これは肺のCT検査や頸動脈エコー、甲状腺の超音波検査の普及、健診の採血での甲状腺ホルモン測定などで見つかるケースが増えたことによります。
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日本内分泌会「甲状腺腫瘍(良性・悪性)」
3.甲状腺の炎症が原因の病気
「急性化膿性甲状腺炎」、「亜急性甲状腺炎」は、痛みや発熱などを伴う炎症です。風邪の後に続いて起こることがしばしばあります。血中の甲状腺ホルモンが過剰になり起こる病気のため、全身倦怠感、動悸、多汗などの症状が生じます。
先に挙げた橋本病も「慢性甲状腺炎」と言われる炎症ですが、こちらは痛みや発熱はありません。
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日本内分泌学会「亜急性甲状腺炎」
甲状腺の病気の治療法は?日常で気をつけたいこと
次に、甲状腺の病気になってしまった際の治療法について解説します。病気によっては、日々の生活で気をつけたいこともあるため紹介します。
◆甲状腺の病気の治療は服薬が中心
バセドウ病の治療は甲状腺機能を抑える飲み薬、橋本病であれば、足りない甲状腺ホルモンを補う飲み薬が基本です。どちらも、症状やホルモン値が正常化しても主治医の指示に従って経過観察が必要です。
急性化膿性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎も同様に服薬で治療します。
◆甲状腺機能亢進症は激しい運動を控える
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症は、頻脈などで心臓に負担がかかります。ホルモン値が落ち着くまでは激しい運動を控えて、散歩やウォーキングなどの軽い運動にとどめてください。
◆甲状腺機能低下症はヨウ素(ヨード)の摂り過ぎに注意
橋本病などの甲状腺機能低下症の方は、海藻類などのヨウ素(ヨード)を多く含む食品に気をつけてください。ヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンの原料ですが、甲状腺機能低下症の場合、摂り過ぎはかえって甲状腺の機能を低下させてしまうことがあります。
◆悪性腫瘍は手術で切除
良性腫瘍であれば基本的には治療の必要はありませんが、細胞診で良性であっても腫瘍の一部に悪性の細胞が潜んでいる可能性もあるので、主治医の指示に従って定期検査を受けましょう。甲状腺がんのほとんどは良性に近い「乳頭腺がん」なので、甲状腺を部分切除する手術で治ります。治癒しにくい甲状腺がんはまれです。
甲状腺の病気かも?と思ったらセルフチェック
甲状腺の病気は専門医でも判断が難しいことがあります。体の不調があり甲状腺の病気が疑われる場合、まずは以下の項目を参考にセルフチェックを行ってみましょう。
甲状腺亢進症状と甲状腺低下症状について、それぞれ4つ以上当てはまる場合は、一度血液検査で甲状腺ホルモン値を検査してみましょう。
◆甲状腺機能亢進(ホルモン分泌が多い)症状
- ・疲れやすさやだるさがある
- ・発汗増加
- ・暑がりである
- ・脈が早い
- ・手足が震える
- ・甲状腺が腫れる
- ・体重が減少する
- ・イライラする
- ・痒みがある
- ・口が渇く
- ・眠れない
- ・微熱が続く
- ・息切れがする
- ・髪の毛が抜ける
- ・排便の回数が増える
- ・眼球が出てくる
◆甲状腺機能低下(ホルモン分泌が少ない)症状
- ・疲れやすさやだるさがある
- ・発汗減少
- ・寒がりである
- ・脈拍数が少ない
- ・むくみ(眼、顔、全身)
- ・甲状腺が腫れる
- ・体重が増加する
- ・気力がない
- ・皮膚が乾燥する
- ・声が枯れる
- ・眠たい
- ・記憶力が低下する
- ・動作が鈍い
- ・髪の毛が抜ける
- ・便秘
- ・筋力が低下する
▼参考資料はコチラ
医療法人社団金地病院「甲状腺自己チェック」
まとめ
甲状腺の病気は女性に多く、さまざまな原因や種類、症状があります。いずれも早期発見・治療を行えば改善が見込める病気であり、正しい知識をもつことが重要です。甲状腺の病気が疑われる場合はセルフチェックを行い、状況に応じて医師の診断を受けましょう。
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