パニック障害になる人は約100人に1人で、20-30代での発症が多く、男性よりも女性に発症しやすいといわれています。
火事や地震など、突発的な生命の危機に直面した時、鼓動が早くなり、血の気がひいて冷静に物事が考えられなくなります。このような反応は、もともと身体に備わった生き延びるためのプログラムです。
ところが、危険ではない状況でもこのような症状、パニック発作が起きてしまうことがあります。
「パニックになる」という表現は日常的に使われていますが、「パニック発作」「パニック障害」という病名とはどこが違うのでしょうか。自分や周りの人がパニック障害を発症してしまったら、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。今回はパニック障害の人が感じている不安やつらさに焦点をあてて解説していきます。
パニック障害とは?
パニック障害になる人は約100人に1人で、20-30代での発症が多く、男性よりも女性に発症しやすいといわれています。
火事や地震など、突発的な生命の危機に直面した時、鼓動が早くなり、血の気がひいて冷静に物事が考えられなくなります。このような反応は、もともと身体に備わった生き延びるためのプログラムです。
ところが、危険ではない状況でもこのような症状、パニック発作が起きてしまうことがあります。
パニック障害の症状
パニック障害では、突然理由もなく激しい不安に襲われて、
心臓がドキドキする、汗が出る、体が震える、めまいがし
てふらふらする、息が苦しくなるといった症状が現れ、10
分以内にピークに達します。
「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖を覚え
ることもあります。
このような症状は「パニック発作」と呼ばれており、パニ
ック発作を繰り返して生活に支障が出ている状態を「パニ
ック障害」と呼びます。
発作は状況に関係なく起きるため、寝ている時に起きるこ
ともあります。
突然、動悸や息苦しさ、めまいを感じると、心臓や肺などの病気を考え、内科を受診される方が多いと思います。身体的な異常が見つからないにも関わらず、発作を繰り返す場合は、パニック障害かもしれません。
パニック障害がおきても命の危険はありませんが、「このまま死んでしまうのではないか」「自分では症状をコントロールできない」と感じます。
パニック発作になったときの苦しさや恐怖から、発作のない時も「また発作が起きたらどうしよう」と心配になることが多く、これを「予期不安」といいます。
また、発作が起きた時、「そこから逃れられないのではないか」「助けが得られないのではないか」「恥をかくのではないか」との思いから、特定の場所や状況を避けるようになります。電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じるため、公共交通機関を利用できなくなり、外出ができなくなってしまうことがあります。これを「広場恐怖」といいます。
苦手な場所は広場とは限らず、人混みの中に行くこと、一人での外出、美容院に行くなど、人によって恐怖を感じる場所は様々です。
広場恐怖が強くなると出勤できず、会社を辞めてしまう方
もいらっしゃいます。さらに症状が進むと外出も困難にな
り、引きこもりがちになるので人間関係にも影響が出てき
ます。そのため「うつ症状」を伴う方も多いです。
パニック障害ではパニック発作を何度も繰り返すので、はじめは心配していた家族・友人や職場の人たちも、身体の異常がないとわかるとだんだん「またか」「気のせいなのに大騒ぎをする」と思うようになります。
ご本人はとても苦しくて不安で、症状も実際起こっているのに、そのつらさを理解されにくいという状況になってしまいます。
薬物による治療は、「パニック発作を起こさない」「予期
不安や広場恐怖を軽減させる」ことが目標になります。
SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)などの抗うつ薬
のほかに、抗不安薬も使われます。SSRIは副作用が少なく
依存性が起きにくいですが、急に中止すると断薬症状とし
てパニック発作と似た症状(めまい、発汗、吐き気など)
が出てしまうことに注意が必要です。
抗不安薬は、即効性がありますが、長く使い続けると依存
性が出ることがあります。医師と相談の上で必ず用法・用
量を守って内服してください。
パニック障害では、薬物治療に加えて精神療法の併用が重要です。「曝露療法」や「認知行動療法」という治療法は、薬による治療と同じくらい効果があることが認められています。
薬が効き始めて発作が起こらなくなってきたら、外出などに少しずつ挑戦することも治療の一環になります。医師や公認心理師等と相談しながら、焦らず一歩一歩ゆっくりと取り掛かかりましょう。
職場での配慮のポイント
パニック障害は責任感の強い人が発症しやすいという傾向があり、「周囲の人に迷惑をかけてしまったらどうしよう」という思いから自分を責めてしまい、抑うつ的になってしまいます。
通勤電車や人混み、エレベーターや会議室を避けるようになると仕事にも支障をきたしてしまいます。
ご自身が発症してしまった場合は速やかに精神科を受診し、医師と相談の上で薬物治療などを始めることが早期回復につながります。休職が必要になる事もあり、思い切ってしっかり休んだ方が、治りが早いこともあります。
職場上司の方は、本人の症状を理解し、なるべく満員電車を利用せずにすむよう、通勤時間をずらしたり、テレワークに切り替える等、柔軟な対応が必要です。
パニック障害は症状のつらさのわりに、内科的に異常がない事から、周囲の理解を得られにくい疾患です。内服・精神療法に併せて、周囲の方の理解とサポートが、症状改善のために非常に重要と言えますので、病気の特徴を正しく理解し、職場全体で支え合うことが大切です。
<参考文献>
こころの病気について知る 不安障害 パニック障害(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
こころの病気を知る パニック障害 不安障害(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html