「フレイル」の概念が徐々に広がりつつあります。近年では、アイフレイルも注目を集めるようになりました。
リモートワークが浸透したことにより、労働者が目の健康を改めて意識する機会も増えています。そのことをふまえると、経営陣や労務担当者などにも、アイフレイルの理解が求められていると言えるでしょう。アイフレイルを理解することは、目の健康を考えアイフレイル対策を取ることの第一歩です。
当記事では、アイフレイルの概要、健康経営とアイフレイルの関係、アイフレイルのチェック方法などについて解説します。
「フレイル」の概念が徐々に広がりつつあります。近年では、アイフレイルも注目を集めるようになりました。
リモートワークが浸透したことにより、労働者が目の健康を改めて意識する機会も増えています。そのことをふまえると、経営陣や労務担当者などにも、アイフレイルの理解が求められていると言えるでしょう。アイフレイルを理解することは、目の健康を考えアイフレイル対策を取ることの第一歩です。
当記事では、アイフレイルの概要、健康経営とアイフレイルの関係、アイフレイルのチェック方法などについて解説します。
アイフレイルとは、加齢によって眼の機能低下が引き起こされた状態、および機能低下リスクが高い状態のことです。
そもそもフレイルとは、加齢に伴う身体機能の低下により各種健康障害を起こしやすい状態を指します。フレイルは、健康と要介護状態の中間的な存在で、身体的な不都合以外に、精神的・心理的にも問題を抱えやすくなることが知られています。
アイフレイルに話を戻すと、年齢を重ねるほど眼は衰えます。構造的にごく自然なことではあるのですが、ここに何らかのストレスが加わることによって、視機能低下など、ものを見る機能に支障をきたすようになるのです。
アイフレイルを放置すると、眼の機能低下が進むだけでなく、眼疾患を発症するおそれもあり注意が必要です。また、眼の機能が低下すると自律機能低下、日常生活の制限など、フレイルを悪化させることにもつながり、結果的に健康寿命を短縮させるおそれもあります。
アイフレイルの啓発と予防が注目されるようになった理由に、健康経営に注力する企業が増えていることが関係しています。
健康経営とは、自社で働く従業員の心身の健康維持と増進に努められるよう、経営的な観点で考えること、ならびに戦略的に実践することです。従業員が心身ともに健康なら、業務への活力や生産性のアップにつながり、ひいては業績や株価向上などに貢献できると考え、健康経営を意識した活動に取り組む企業が増えています。
業務でデジタルデバイスを利用する機会が増えたこと、テレワークやオンライン業務の急速な普及によって、眼精疲労をはじめとする眼の不調に悩む人は増えています。プレゼンティーイズム(健康問題による生産性低下)の予防と改善は、企業が業績アップを目指すにあたって避けて通ることのできない課題と言えるでしょう。
上述した通り、アイフレイルは加齢により眼の脆弱性が増加することに、内的・外的ストレスが加わることで眼の機能が低下したことを指します。
アイフレイル発生には、それぞれ以下のような要因があります。
●形態や構造的な変化
●機能性変化
形態や構造的な変化の具体例として、血管の脆弱化、慢性炎症、肺状板脆弱化、網膜神経細胞減少、水晶体混濁、角膜内皮細胞減少などがあります。
機能性変化の具体例は、調整力低下、融像幅低下、収差の増加、コントラスト感度の低下などがあります。
●眼軸長が伸びる(眼が伸びる)ことによる極度の近視、もしくは短すぎることによる極度の遠視
●糖尿病や高血圧の全身性疾患を有している
●眼疾患の家族歴がある
遺伝や体質などの要素が関係しています。自力で改善することは難しいものの、全身性疾患や眼疾患の家族歴などから、「自分もアイフレイルに気をつけよう」と従業員に対して注意を促すこともできます。
●生活習慣
●喫煙習慣
●紫外線への曝露
●手術後
●薬剤投与
上記要因のうち、とくに生活習慣、喫煙習慣、紫外線への曝露は、当人による予防と対策が可能です。
アイフレイル対策の目標は
●視覚障害により日常生活が制限される人を減らす
●自立機能の低下により要介護状態に至る人を減らす
●読書、運転、スポーツ、趣味などの人生の楽しみ、快適な日常生活が制限される人を減らす
アイフレイルは、身体的フレイル、心理的・認知的フレイル・社会的フレイル、オーラルフレイルにも影響を与えます。万が一アイフレイルが進行して視機能が低下すると、社会生活に支障をきたしQOL(生活の質)にも悪影響を及ぼします。
アイフレイルを見逃さない、悪化させないためには、アイフレイルの可能性を早期に発見し、適切な検査と診断を受けて、治療を含めた処置につなげることが何より重要です。
アイフレイルは、目のかすみや疲れ感など、日常生活のなかに潜むちょっとしたお悩みが原因で見つかることがあります。
日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発サイトでは、アイフレイルのチェックリストを作成し公開しています。アイフレイルを疑う症状は案外身近なものばかりであることを従業員に理解してもらうためにも、ためしにチェックしてもらうのもよいかもしれません。
▼参考資料はコチラ
日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発公式サイト「あなたは大丈夫?アイフレイルチェックリスト」
白内障や緑内障などの眼疾患は、加齢の影響を受けやすいです。セルフチェックは、アイフレイルを疑うきっかけを作ることができても、必ずアイフレイルを発見できるものではありません。ですので、40歳を過ぎたら体のメンテナンスの一環と考えて、眼科での定期検診を受けるよう従業員にすすめるのもよいでしょう。
▼参考資料はコチラ
日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発公式サイト「点検しよう」
フレイルは、適度な運動、リハビリテーション、食生活の見直しを行うことで改善が見込まれることが知られています。そのため、従業員が運動をしたり十分な休憩を取ったりできるよう、各企業がユニークな取り組みを実施しています。
アイフレイル対策に向けた取り組みとして、参天製薬株式会社では眼の健康増進を目的とした「アイケアチャレンジ!マンスリープログラム」を提供しており、同プログラムの提供を受け実施した企業にアンケートを実施したところ、従業員のプレゼンティーイズム改善が期待できるとの結果を発表しました。
当プログラム参加前後で、目の調子が悪いと感じている人の割合は41%から18%に改善されました。さらに、目の疲れが軽減した参加者は、首や肩のコリと頭痛が改善したと回答した方の割合が、目の疲れが改善しなかった参加者たちよりも高かったです。
従業員のパフォーマンス向上を目的に、三菱地所株式会社ではパワーナップ(仮眠)制度を2018年1月から導入しています。同社では2016年に健康経営宣言を行い、従業員が健康とパフォーマンスアップを両立できるよう、生活の根底である食事・運動・睡眠を整えられるような活動に取り組み始めたとのことです。
社会的関心の高まりから、健康経営に着目する企業が増えています。それに伴い、経営陣には従業員の心身健康を考え経営計画を策定すること、労務担当者には実務に落としこむことがそれぞれ求められるようになりました。
アイフレイルは特別なことではありません。誰でも起こる可能性がありますので、従業員にも目の健康の重要性を説明して健康管理を促し、不調予防に努めましょう。
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