運動リスクの少ないウオーキングとして注目のクアオルト健康ウオーキング。自然の中でのリラックス効果があるだけでなく、メンタルヘルスケアにもよいとされます。
当記事では、クアオルト健康ウオーキングの概要や実施時のポイント、実施している自治体やモデルコースについて解説します。
運動リスクの少ないウオーキングとして注目のクアオルト健康ウオーキング。自然の中でのリラックス効果があるだけでなく、メンタルヘルスケアにもよいとされます。
当記事では、クアオルト健康ウオーキングの概要や実施時のポイント、実施している自治体やモデルコースについて解説します。
クアオルト健康ウオーキングとはドイツ発祥の運動療法です。
特定の自然地域において、個人の体力に合わせた運動リスクの少ないウオーキングを行うのが特徴となります。
心筋梗塞、狭心症のリハビリ、高血圧、骨粗しょう症などの治療として活用されており、健康寿命延伸のための施策として国が推進しています。
自然の中を歩くことで、リラックスしながら無理なく運動できるため、健康増進とメンタルヘルスケアが両立できるのが大きな魅力です。
クアオルト(Kurort)とは、ドイツ語で「保養地・療養地」を意味します。
ドイツでは、特定の地域(自治体)をクアオルトとして認定し、その地域で土壌や海、気候などの自然を療養に活用した場合、医療保険が適用できる制度があります。
クアオルトの認定基準は法律に基づいており、自然療法の専門医、治療のプログラム、必要な施設などが厳格に定められていますが、天然の温泉や海辺、美しい自然環境などがある地域が認定されるのが一般的です。
そのため、広義では健康増進やリラックスを目的とした施設が集まる地域や町をクアオルトと呼ぶこともあります。
クアオルトには、気候療法と地形療法を組み合わせた「気候性地形療法」というコースがあります。
まず、気候療法は自然の中での大気の作用の変化を活用した療法です。
普段生活する場所とは異なる気候の土地を訪れ、さまざまな気候要素が心身に作用することが期待されています。
また、地形療法は勾配のある土地を、治療を目的として医師から処方された運動量で歩く療法です。
クアオルト健康ウオーキングは、気候性地形療法コースの基準を取り入れ、日本型に改良した運動指導と言い換えられます。
気候性地形療法の目的は、予防医学・健康増進です。
原則として、個人の状態に応じた無理のない歩き方が基本となります。
これを踏まえ、クアオルト健康ウオーキングのポイントを3つに分けて解説します。
運動中の目標心拍数は、必ず心臓に負荷がかからないペースに設定する必要があります。
運動に慣れていない人は「160-年齢」、運動習慣のある人は「180-年齢」を基準(※)とするのが一般的です。
最初はゆっくりと歩き出し、慣れてきたら基準の心拍数をめどに歩行しましょう。
上り勾配のある地点や、地図に指示している場所をチェックポイントとして、定期的に心拍数を測りながら、歩く速さなどで運動ペースを調整します。
※血圧降下剤を服用している人は計算結果からさらに10~20%減らすことが推奨されます
運動中は、肌が「やや冷える」と感じる状態をキープすると運動効果が高まるため、重要なポイントとなります。
具体的には、運動中の皮膚の温度(体表面温度)が、運動前と比べて平均2度下がっている状態が望ましいとされます。
首元を開けたり、袖をまくったりして服装を調整し、ときどき肌を触り、汗が気化して冷たくなっていることを確認しましょう。
それでも暑いと感じる場合は、両手を広げて風を受けたり、スプレーボトルの水を用意して首の動脈付近に吹きかけたりして、強制的にやや冷える状態をつくります。
自治体によってはガイドと一緒にクアオルト健康ウオーキングのコースを散策するイベントがあります。
こうしたイベントでは、高血圧の方には参加制限が設けられています。
コース内容によりますが、2度高血圧(血圧が最高160mmHg以上、または最低100mmHg以上)の場合、医師の許可がないと参加できません。
3度高血圧(最高180mmHg以上、または最低110mmHg以上)の場合、参加が認められない可能性が高いため注意しましょう。
▼参考資料はコチラ
所沢市「クアオルト健康ウオーキング参加者募集について」
企業の健康経営の取り組みとして、社外活動としてクアオルト健康ウオーキングの実施を検討してみましょう。
参考情報として、コースの管理・イベント実施をしている自治体やモデルコースの例をご紹介します。
クアオルト健康ウオーキングは、2008年に山形県上山市から健康づくりとして始まってから少しずつ普及し、2024年6月時点で実施している自治体は全国で29箇所となりました。
各自治体ホームページで参加イベントを行っている場合もあるので、団体での参加申込が可能かどうか確認してみましょう。
以下の参考リンクから実施している自治体を確認できます。
▼参考資料はコチラ
クアオルト健康ウオーキング コースガイド
上記の参考リンクでは自治体だけでなく、現在用意されているモデルコースをすべて確認できます。
企業でクアオルト健康ウオーキングを実施検討する場合、コース全長や高低差に着目してプランを考えてみましょう。
「無理なく」をコンセプトとするなら、全長1.5km前後、所要時間は1〜2時間程度、高低差100m前後で選ぶのがおすすめです。
参加者の平均年齢や経験者の数によっては、全長3km超のコースを検討してもよいでしょう。
以下に、全長1.5km前後と全長3km前後のおすすめコースをそれぞれご紹介します。
埼玉県所沢市 荒幡富士特別緑地保全地区コースは、コース全長1.5km、高低差77mの比較的平易なコースです。
首都圏からアクセスしやすく、入門コースとして適している一方、現地ボランティアが保全するさまざまな植物や野鳥と触れ合うことができます。
コース途中にある荒幡富士(あらはたふじ)は屈指のビューポイントとなっており、適度な負荷で自然を満喫できるでしょう。
▼参考資料はコチラ
埼玉県所沢市「荒幡富士特別緑地保全地区コース」
山形県西川町 一本ブナコースは、コース全長3.3km、高低差126mの中級コースです。
地蔵沼の浮き桟橋やブナの原生林、樹齢400年以上といわれる巨大な一本ブナなどビューポイントが豊富で、終始自然に包まれながらのウオーキングが楽しめます。
近辺に月山志津温泉があるため、宿泊を前提としたプランを組むとよいでしょう。
▼参考資料はコチラ
山形県西川町「一本ブナコース」
クアオルト健康ウオーキングは、負荷のかからない運動であると同時に、自然と触れ合うことでメンタルヘルスにも効果のある療法です。
「温泉地へ行くついでに自然散策をする」というイベントに、少しの運動意識を加えるようなものと考えましょう。
今回モデルコース例をご紹介しましたが、実施自治体はまだ少ないのが現状です。
近隣の自治体への申込が難しい場合は、モデルコースを参考に独自のウオーキングプランを考えるのもよいでしょう。