ダイバーシティー経営の推進、労働者不足などを背景に、女性労働者の活用はますます注目が高まっています。政府も国を挙げて女性の活躍を推進、その一環として2016年には女性活躍推進法が施行されました。来たる2022年には、101~300人以下の従業員を雇用する企業にもこの法律の対象が拡大するなど、他人事ではなくなる企業がほとんどかもしれません。
この記事では、女性活躍推進法の概要や、新たに対象となった企業が取るべき行動について詳しく解説します。
ダイバーシティー経営の推進、労働者不足などを背景に、女性労働者の活用はますます注目が高まっています。政府も国を挙げて女性の活躍を推進、その一環として2016年には女性活躍推進法が施行されました。来たる2022年には、101~300人以下の従業員を雇用する企業にもこの法律の対象が拡大するなど、他人事ではなくなる企業がほとんどかもしれません。
この記事では、女性活躍推進法の概要や、新たに対象となった企業が取るべき行動について詳しく解説します。
女性活躍推進法とは
女性活躍推進法とは、女性が働きやすい社会の実現を目指して2016年に施行された法律です。正式名称を、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言います。
これにより、国や自治体、企業などの事業主には、女性の活躍状況の把握や課題分析、数値目標の設定、行動計画の策定・公表などが義務化されました。2019年5月には法律の一部が改正され、300人以下の企業への「努力義務」だったものから、101~300人以下の企業への「義務化」となりました(施行は2022年4月から)。また、301人以上の企業に対しても情報公表の内容強化・特例認定制度の創設などが追加されています。
なお、女性活躍推進法は10年間の時限法ではありますが、制定以降も政府により法律が適宜見直されています。そのため、企業の担当者は常に情報をアップデートする必要があります。
女性活躍推進法が導入された背景と目的
女性活躍推進法の導入も追い風となり、社会における女性の活躍が目覚ましい昨今ですが、そもそもこの法律が導入された背景と目的は何だったのでしょうか。
背景
内閣府男女共同参画局が発行している「共同参画(令和3年5月号)」によると、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数において2021年の日本の総合スコアは0.656と156ヵ国中120位、先進国の中では最低レベルとなっています。とくに女性管理職の割合の低さ(14.7%)についても言及しています。
こうした状況は今に始まったわけではありませんが、ジェンダー平等について、日本が各国から遅れをとっていることは明らかです。
また、上記男女共同参画局の「男女共同参画白書(概要版)平成30年版」では、平成29年における女性の非労働力人口2,803万人のうち、262万人が就業を希望しているというデータが明らかになっています。つまり、少子高齢化に伴う労働者不足の解消についても、女性の雇用が鍵を握っていると言えます。
目的
女性活躍推進法では、下記の3つを基本原則として掲げています。また、これらの推進・実現により、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を図るとしています。
- ①女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役 割分担等を反映した職場慣行が 及ぼす影響への配慮が行われること
- ②職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
- ③女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
簡潔に言えば、女性のキャリアアップの推進を通じて、日本社会における男女格差の是正、労働力の強化を目指しています。
女性活躍推進法の対象企業
2021年9月現在では、実施義務の対象は「常時雇用する労働者が301人以上の企業」とされています。一方、「常時雇用する労働者が300人以下の企業」は努力義務という位置づけです。
しかし2019年の法改正により、2022年4月からは労働者101~300人以下の中堅・中小企業にも実施が義務化されることになりました。 詳細な情報については、下記の厚生労働省東京労働局のホームページから確認できます。
【2022年4月1日施行】改正女性活躍推進法とは
2022年4月より女性活躍推進法の対象企業が労働者101~300人以下の中堅・中小企業にも拡大されるのにあたって、新たに対象となる企業は施行日までに下記の準備を進める必要があります。
一般事業主行動計画の策定
女性労働者の活躍状況を把握するとともに課題を分析し、一般事業主行動計画を策定・社内周知・外部公表しなくてはいけません。さらに東京労働局に届出、年に一回の情報公表も義務づけられます。詳細は後述します。
女性活躍に関する情報公表
自社の女性従業員の活躍に関する状況について、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備」に掲げられている項目よりそれぞれ一項目以上を選択し、求職者などに向けて情報を公表する必要があります。
女性活躍推進法における事業主が行うべき4ステップとは
新たに女性活躍推進法の対象となった企業は、施行日までに下記4ステップを実施する必要があります。なお、厚生労働省では、行動計画の策定等について、専門アドバイザーによる個別サポートも提供しています(先着順)。
詳しくは下記ホームページを参照してください。
中小企業のための女性活躍推進事業
ステップ1:自社の女性の活躍状況の把握・分析
採用者または労働者に対する女性比率、平均勤続年数の男女比、月別の平均残業時間数、管理職の女性比率を計測し、女性労働者の活躍状況を把握・分析します。
ステップ2:一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表
上記の分析結果から行動計画を策定します。東京労働局の「行動計画策定かんたんガイド」では、女性の離職率が高い企業、残業時間が多い企業などケース別に具体的な計画例も記載しているのでぜひ参考にしてください。策定した行動計画は社内周知および、ホームページなどを通じて外部に公表します。
ステップ3:一般事業主行動計画を策定した旨の届出
東京労働局に「一般事業主行動計画策定・変更届」を届出します。また、自社の女性の活躍に関する情報を「女性の活躍推進企業データベース」に登録し、年一回更新します。
ステップ4:効果測定
届出後は、計画の達成状況や実施状況を定期的に効果測定し、その結果を改善やさらなる計画につなげていきます。
女性活躍推進法を行わない場合罰則はある?
対象企業が女性活躍推進法の実施義務を怠ったという理由で、企業および社員が罰せられはしません。ただし、法で定められている情報を公表しない、あるいは虚偽の情報の場合は、厚生労働大臣より勧告を受けることがあります。また、この勧告に従わなかった場合は、同大臣より企業名を公表される可能性もあります。企業にとって大きなイメージダウンになるのは必至なので、くれぐれも注意してください。
女性活躍推進法を企業が推進するメリット
企業が女性活躍推進法に積極的に取り組むことで、女性労働者だけではなく企業もさまざまなメリットを享受できます。
企業のブランドイメージ向上につながる
企業の女性活躍に対する積極的な取り組みを社会にアピールできるので、企業のブランドイメージ向上につながります。特に厚生労働省から、女性の活躍を推進している企業として「えるぼし」「プラチナえるぼし」に認定されると、自社の商品などにもマークを利用できるようになり、優良企業として世の中に広く周知できます。また、女性が働きやすい職場と認知され、優秀な女性労働者の獲得も期待できます。
ダイバーシティー対策につながる
企業の持続的な成長には、ダイバーシティー経営の推進が欠かせません。その一翼を担っているのが女性の活躍推進です。女性活躍推進法に取り組み、さまざまな個性や能力を持ち合わせる女性を評価し積極的に起用することは、ダイバーシティー対策とともに労働者不足の解消にもつながります。
助成金獲得につながる
行動計画の取り組み内容を実施し、3年以内に数値目標を達成した場合、厚生労働省により、「両立支援助成金」が支給されます(常時雇用する労働者が300人以下の企業限定)。 また、「えるぼし」に認定された中小企業は、日本政策金融公庫の融資制度を通常よりも低金利で利用できるメリットもあります。
まとめ
大企業であっても持続的な成長が困難なこの時代を生き抜くためには、企業価値を高め、社会から「選ばれる」企業を目指す必要があります。その鍵を握っているのは女性の活躍かもしれません。
改正女性活躍推進法が施行される2022年4月から義務化の対象となる中小・中堅企業は、同法について理解を深め、体制構築に向けて準備を進めましょう。
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