健康診断後の事後措置とは、一般あるいは特殊健康診断や、自発的健康診断の結果、異常所見が認められた従業員に対して行われる対応のことです。事業者(企業)が医師の意見を聞いた上で必要と判断した場合に、今後の就業について適切な措置を相談・実施します。
実際の事後措置の流れや就業判定の区分などについては、下記記事をご覧ください。
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徹底解説!
近年、健康診断で何かしらの異常が見つかる労働者は増加しており、令和3年には全体の58.7%に上りました。
労働安全衛生法では、健康に異常があるとされる「有所見者」に対して「医師等からの意見聴取」を実施することが企業の義務として位置付けられています。そのため、企業は健康診断実施後に適切な事後措置を行い、従業員の健康を守ることが重要なのです。
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e-Stat「2021年 定期健康診断結果報告」
実際にどのような事後措置が行われることがあるのか、いくつか例を挙げて説明します。
作業内容の変更・労働時間の短縮
1つ目は、作業内容の変更や、労働時間の短縮です。作業内容の変更では、たとえば、重い荷物を運搬する作業を行っていた従業員を、より身体的な負担の少ないラベル貼り等の作業に転換するケースが考えられます。労働時間の短縮では、8時間勤務を6時間勤務に変更したり、深夜に業務を行う回数を減らしたりするケースなどがあるでしょう。
作業環境の改善・設備の整備
2つ目は、作業環境の改善や、設備の整備です。まずは作業環境を確認し、改善できる点がないか確認します。その上で、より負担を少なくして健康を守ることができるよう改善策を講じることがあります。たとえば、従業員が手動で荷物の運搬を行っていた場合に、より身体的負担を軽減するために、搬送機を利用することができるよう整備するケースなどが考えられるでしょう。
産業医等による保健指導
3つ目は、産業医等による保健指導です。労働安全衛生法の第66条の4では、事業者は、"定期健康診断" "特殊健康診断"等の結果『異常の所見があると診断された労働者』については、健診後3か月以内に医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない」とされています。
また、聴取した医師等の意見については、健康診断個人票に記載しなければなりません。
そして、従業員の健康状態を自身で把握させ、改善してもらうため、産業医や保健師による保健指導を行うだけでなく、その意見を勘案して必要であれば就業制限や要休業といった措置をとりましょう。
衛生委員会への報告・審議
4つ目として、産業医の意見を衛生委員会へ報告したり審議したりすることがあります。なお、該当する従業員が企業内で特定されることがないように、必要に応じて情報の集約や加工などを行った上で報告します。
労働基準監督署への報告
最後に5つ目は、労働基準監督署への報告です。健康診断によって作成された健康診断個人票は、5年間の保存義務だけでなく、①定期健康診断 ②特定業務従事者の健康診断 について、常時50人以上の労働者を使用する事業者は「定期健康診断結果報告書」を所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。
事後措置では、従業員にとって不利益な取り扱いをしてはならないと定められています。たとえば、体調不良を理由に解雇したり、産業医が「配置転換で十分」という意見であるにもかかわらず、企業が一方的に休業を要請したりするケースがこれに当たります。このように、従業員の健康を確保するために必要な範囲を超えた取り扱いを行うことは適切ではありません。不適切な措置を講じないよう、しっかりと医師の意見を聞くことが大切と言えるでしょう。
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健康診断の事後措置は、従業員の健康を守るために欠かせないものです。健康診断で何らかの異常が見つかった場合には、産業医の意見を聞きつつ、健康を守るために必要な措置を講じる必要があります。ただし、健康を守るという範囲を超えて不利益な取り扱いを行うことがないよう注意が必要です。そのためにも、産業医との連携が大切です。しっかりと医師と意見交換をしながら、適切な措置を決定するようにしましょう。
事後措置によって、従業員の健康を守ることが期待できます。今回ご紹介した事後措置の流れや事例を参考に、健康診断を行った際にはしっかりと事後措置を行うことが大切です。必要に応じて就業環境や内容を見直しながら、従業員の健康を守るために努めましょう。