2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会のありかたや働き方を激変させました。
非接触やソーシャル・ディスタンスという新たな常識や、リモートワークを筆頭とした新しい働き方はすでに定着しつつあります。
産業保健の取り組みも、既存の枠組みでは考えつかなかった新しい働き方も想定して健康管理を検討する必要が出てくるでしょう。
そこで検討すべき取り組みのひとつが、産業保健におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)です。
当記事では、産業保健におけるDXで不可欠な健康管理システムを主に、そのメリットやサービス事例について解説します。
産業保健でDXを進めるには健康管理システムの導入が重要
まずDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術によって生活やビジネスが変容していくこと全般を指します。
近年、スマートフォンやタブレットなどの便利なデジタル機器が一般的に普及し、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった高度なテクノロジーは将来的に当たり前になると言われています。
こうしたデジタル技術単体だけでなく、それらを活用し、物事をより良く変えていく取り組みを包括するのがDXの思想です。
では、産業保健の場合はどうでしょうか。
産業保健でDXを推進していくためには、一般的に健康管理システムの活用が重要となります。
健康管理システムとは、人事労務担当者や産業保健スタッフが行う健康診断・ストレスチェック・長時間労働などの健康管理をデジタルで一元管理できる仕組みです。
健康経営とPHR(Personal Health Record:個人の健康・医療・介護に関する情報)の土台となるため、新しい産業保健のあり方を検討するためには不可欠と言えるでしょう。
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健康管理システムがもたらすメリット
産業保健におけるDXに不可欠な健康管理システムは、具体的にどういったメリットがあるのでしょうか。
健康管理システムを活用するメリットは、「健康管理業務の効率化」と「蓄積された健康データの活用」の2つに大別できます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
健康管理業務の効率化
健康管理業務は、産業医との連携や健康診断結果の管理、就業区分判定・面談調整、年次に行う労働基準監督署への報告対応など多岐に渡ります。
これらすべてを人事労務担当者が人の手で実施するとなると、非常に煩雑で時間と労力を要します。
健康管理システムでこうした業務を自動化できれば、大幅な効率化が図れるでしょう。
効率性だけでなく、従業員の健康情報を一元化することで、産業医や関連機関間での共有がしやすくなり、健康管理そのものの質向上が期待できます。
蓄積された健康データの活用
健康管理システムを運用していくと、従業員の健康データが蓄積されていきます。
健康管理システムを提供するベンダーは複数存在しますが、いずれも蓄積データの分析機能を備えているのが一般的です。
つまり、健康診断結果やストレスチェック結果のデータ化によって、瞬時に自社の健康課題が可視化され、早期に的確な対策を講じることが可能となります。
有所見者や高ストレス者なども明確な基準によって抽出できるため、面接指導の抜け漏れも発生しません。
勤怠情報の登録が可能なサービスの場合は、健康情報と紐づけた複合的な管理も実現します。
従業員個人の健康ニーズの把握や健康指導に役立つだけでなく、集約したデータによって企業全体の健康経営の促進にもなるでしょう。
健康管理システムのサービス事例
健康管理システムは一般的な概念ではなく、企業が開発するサービスなので、市場に複数存在します。
そこで、参考として当社が提携しており、健康管理システムを提供する企業・サービス内容について3社をご紹介します。
株式会社WellGo
株式会社WellGoは、企業・健保向けの健康経営推進プラットフォーム「WellGo(ウェルゴー)」を開発・運営しています。
人事向け機能としては、健康診断結果の一元管理やリアルタイム管理、集団分析結果における数値の見える化、ストレスチェック実施、労働時間管理、健康イベント開催などさまざまです。
健康診断結果やストレスチェックの集団分析結果、勤怠情報などをすぐに確認でき、経年変化が簡単に確認できるため、健康経営のPDCAを円滑に進められます。
さらに、野村ホールディングス株式会社の社内ベンチャーとして創業した経緯を活かし、大手金融機関が採用したセキュリティシステム管理を実施しているため、個人情報の扱いも安心です。
WellGo最大の特徴は、従業員の健康活動に対するモチベーションを高めるためのイベント開催機能です。
スマートフォン・スマートウォッチなどの端末とアプリの連携により、運動・食事・睡眠・体温などをタイムリーに記録・チェックでき、会社全体あるいは部署全体ごとにランキングを出して競争しながら健康管理ができます。
ほかにも毎日の健康クイズやポイント還元など、続ける楽しさを意識したサービスとなっています。
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株式会社 WellGo
株式会社JMDC
株式会社JMDC(日本医療データセンター)は、膨大なレセプトデータや健診データなど「医療ビッグデータ」の力で持続可能な国民医療を実現するために医療統計データサービスを提供しています。
同社運営の健康管理システム「PepUp(ペップアップ)」は、健診結果を見える化し、健康に関するアドバイスや疾病リスク表示を個別に表示します。
加えて健康レシピや健康関連のニュースなどの情報発信機能、運用や生活習慣の記録機能もあり、従業員が自身の健康状態を自分ごととして捉えやすいサービスとなっています。
ほかのサービスとしては、医師検索や医師紹介機能、チャット機能を使っての健康相談機能を備えた「クリンタル」、ぜんそくなど気象変化に伴う疾患のリスク情報を発信する「Health Weather_」など、医療に関する幅広いニーズを満たすプラットフォームが用意されています。
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ヘルスデータプラットフォーム _ 株式会社JMDC
ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社
ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社は、法人向けヘルスサポート事業を推進する企業です。
提供サービスは、従業員の健康管理をクラウドでサポートする「ヘルスサポートシステム(H.S.S)」、企業と医療機関の仲介となって健康診断の予約や結果連携を行う「ネットワーク健康診断サービス」、健康情報を発信するオウンドメディア「プラスウェルネス」が主となります。
将来的には女性特有の健康問題について支援するサービス創出を目指しているとのことです。
ヘルスサポートシステムは、健診結果やストレスチェック結果、就労データなどを一元管理し、受診勧奨対象者の検索機能、関連機関への提出帳票自動出力機能など、健康管理システムに欠かせない標準的なサービスを提供します。
フォローが必要な従業員に対しては、テレワーク中でも対応できるようZoom連携によるオンライン面談も可能です。
そのほか、健診の受診状況や再検査対象者の割合が一目でわかるダッシュボード機能や、インフルエンザなどのワクチン接種の予約管理機能も備えています。
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ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社
まとめ
近年急速に技術革新が進んでいます。その技術をいかに活用してDXを推進するかが最も重要です。
まずは、産業保健のDXを実現するために健康管理システムの導入を検討しましょう。
うまく運用できれば、健康管理に関する業務を効率化し、従業員へのフォローや組織の課題分析など本質的に必要な業務を充実させられます。
結果として、企業の健康経営はより良質なものとなるのです。
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