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HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンとは? 子宮頸がん予防への効果を解説

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更新日: 2023.08.02
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンとは? 子宮頸がん予防への効果を解説
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この記事を書いた人:清水杏里先生

【監修】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医

【監修】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医

近年、「健康経営」の観点から、女性従業員の健康問題に取り組む企業が増えています。乳がんや子宮がんなど女性特有のがんはよく知られていますが、中でも若い世代の子宮頸がんの罹患は増加傾向にあるといわれています。この子宮頸がんの予防効果が期待できる「HPVワクチン」をご存知でしょうか。本記事では、HPVワクチンの概要や効果、接種が推奨される年齢、企業が女性のヘルスケアに取り組むことで得られるメリットなどについて解説します。

HPVワクチンとは? 子宮頸がんへの効果

子宮頸がんは一般的に、性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)へ感染することで前がん病変(CIN)が形成されて生じます。HPVワクチンとは、このHPVへの感染を防ぐことで、子宮頸がんの発生を抑えるものです。いくつかのタイプに分かれるHPVの中でも、HPVワクチンは、子宮頸がんを発生しやすい16型と18型の感染を防ぐことが可能です。それにより、子宮頸がんの原因の50?70%を防ぐことができます。

HPVワクチンを接種することで、子宮頸がんの前がん病変を抑える効果が明らかなになっています。一部の国では日本よりも接種が進んでおり、前がん病変の予防だけではなく、子宮頸がん自体を防ぐ効果があることも報告されています。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症?子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン?」

HPVワクチンの種類

現在、日本で承認されているHPVワクチンは3種類(2価・4価・9価)です。まず2価では、子宮頸がんの主な原因であるHPV16型と18型に対する効果が期待できます。次に4価は、4つの型に対する効果が認められているワクチンです。16型と18型、そして良性の尖形コンジローマを引き起こす6型と11型に対する効果が期待できます。最後の9価は、これら4型に加えてさらに5つの型(31・33・45・52・58型)への予防効果のあるワクチンです。

▼参考資料はコチラ
日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」

HPVワクチンの接種が推奨される年齢は? 男性も必要?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、一般的なウイルスといえます。性的接触のある女性のうち50%以上が、生涯で一度はヒトパピローマウイルス(HPV)に感染するといわれているのです。子宮頸がんだけではなく、肛門がんや膣がん、尖圭コンジローマなどさまざまな病気の発症に関与しています。

HPVワクチンは、初回の性交渉の前に接種する必要があります。HPVの感染前に接種すれば感染予防が可能ですが、感染後にHPVを排除する効果は報告されていないからです。実際に、17歳以前に接種した女性の88%に子宮頸がん発症の減少が、さらに17?30歳で接種した女性の53%に減少が認められたことが報告されています。

現在日本では、小学校6年生から高校1年生の女子に対して、定期接種として2価と4価のワクチンが認められています。ただし、初回接種時には4価ワクチンが使用されます。さらに、9価ワクチンは9歳以上の女子に対する接種が認められています。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ?キャッチアップ接種のご案内?」

HPVワクチンのキャッチアップ接種とは?

キャッチアップ接種とは、過去にHPVワクチン接種を行っていない方たちを対象に、公費でHPVワクチンを接種できる仕組みです。たとえば平成9年度?17年度生まれ(1997年4月2日?2006年4月1日の誕生日)の女性の中には、HPVワクチンの定期接種を行っていない方たちが含まれているのです。接種対象となる方たちは、2022年4月?2025年3月の期間に公費でHPVワクチンを接種することが可能です。

▼参考資料はコチラ
日本婦人科腫瘍学会「一般の皆さまへHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)についてQ&A」

男性の接種も推奨されている

性交渉による感染を防ぐためには、女性だけでなく男性のHPVワクチンの接種も有効といわれています。さらにHPVは男性に多い咽頭がんや肛門がん、直腸がん、陰茎がんも引き起こすため、男性がHPVワクチンを接種することで病気の予防につながるといえます。日本では男性への定期接種はまだスタートしていませんが、4価ワクチンは9歳以上の男子も自費ではあるものの接種を受けることが可能です。

企業が女性のヘルスケアに取り組むことのメリット

日本では、女性も企業にとって重要な労働力となっています。特に子宮頸がんの発症が多いといわれている30?40代は、働き盛りの年代といえます。その一方で、働く女性たちが必ずしも自分自身のケアを十分に行っているとは限りませんので、企業によるアプローチが必要な分野といえるでしょう。女性の健康問題に積極的に取り組むことは企業の健康経営につながり、結果的に損失を防ぐことができます。

▼関連記事はコチラ
産婦人科医が語る?女性が我慢せず働ける社会のために企業ができること

HPVワクチンの接種率向上のために企業ができること

HPVワクチンの接種率向上のために企業ができるアプローチとしておすすめなのが、ポピュレーションアプローチです。ポピュレーションアプローチとは、集団全体へ同一の健康管理を行うアプローチのことです。集団全体の病気の予防につながる効果が期待できます。なお、ポピュレーションアプローチを効果的に実施するには、PDCAサイクルを回すことが重要といわれています。

ポピュレーションアプローチについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

▼関連記事はコチラ
健康経営に重要なポピュレーションアプローチとは? 取り組み事例や効果を解説

HPVワクチンや子宮頸がんに関するリテラシーの向上

具体的には、HPVワクチンの効果や子宮頸がんの実態などの啓発を行うことで、女性従業員のヘルスリテラシーを高めることが重要です。ワクチンと併せて、子宮頸がんの定期検診を呼びかけることによって、より高い予防効果が期待できるでしょう。

キャッチアップ接種の呼びかけ

現状では、先述したキャッチアップ接種の対象となる世代は、企業にとっては新卒者に該当することが多いでしょう。新卒社員に対して過去の接種の有無を確認するとともに、未接種の場合にはキャッチアップ接種を促すことで、ワクチンの接種率を向上させることができます。

相談窓口の設置

女性特有の健康問題について、他人に相談しづらいという声もあります。そのため専門知識をもつ産業医などの相談窓口を設置することも効果的でしょう。産業医とは、企業へ訪問や常駐をしながら従業員の健康管理について指導・助言を行う医師のことです。特に女性の産業医がいれば、より相談のハードルが下がる効果が期待できます。

▼関連記事はコチラ
産業医とは?役割や業務内容をわかりやすく解説

働きざかりの女性の子宮頸がんを予防する取り組みを

解説してきたように、HPVワクチンの接種が子宮頸がんの予防につながります。企業は、ワクチン接種を推奨される世代の女性社員へ接種を促す取り組みを行うことが大切といえるでしょう。また、同時に子宮頸がん検診の受診の呼びかけも重要です。

女性特有の健康問題は相談しづらいケースもあるので、専門知識をもつ産業医などの相談窓口も有効です。女性の健康問題に取り組むことで、「健康経営」を目指すことをおすすめします。

公開日: 2022.11.15
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