「えるぼし」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本では、女性活躍推進企業の認定制度として「えるぼし」「プラチナえるぼし」が設けられています。これらの認定を受けることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、えるぼし・プラチナえるぼし認定制度の概要や認定基準、申請方法、くるみんとの違いなどについて解説します。
えるぼしって知ってる?認定の条件やプラチナえるぼしについても解説
- 産業保健
えるぼしとは?くるみんとの違い
えるぼしとは、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度のことです。一定の基準を満たした企業に与えられます。女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づいて設けられています。
似たような制度に「くるみん」がありますが、2つの制度には次のような違いがあります。どちらも女性の活躍推進に努める企業を認定する制度であるものの、基づく法律や認定基準が異なるのです。
えるぼしが女性活躍推進法に基づき、女性の活躍推進のために職場環境を整備している企業を対象に認定されるのに対して、くるみんは次世代育成支援対策推進法に基づいており、出産や育児など、子育てのサポート体制を整備している企業を対象に認定されます。
えるぼしの認定基準
えるぼし認定を受けるためには、どのような基準があるのでしょうか。認定を受けるためには、次の5つの認定基準を満たす必要があります。
1. 採用
採用では、競争の倍率(応募者数/採用者数)が男女で同じくらいであることが基準です。もしくは、直近の事業年度で以下の両方に該当する必要があります。女性の正社員の割合が産業ごとの平均値以上であることと、基幹的な雇用管理区分の中の女性正社員の割合が平均値以上であることです。
2. 継続就業
継続就業では、雇用管理区分ごとに「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が各7割以上であること、もしくは、「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が各8割以上である必要があります。
3. 労働時間
労働時間では、雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働と法定休日労働時間の 合計時間数が、事業年度の各月ごとに全て平均で45時間未満であることとされています。
4. 管理職比率
管理職比率では、管理職における女性の割合が、その産業の平均値以上であることが必要です。もしくは、直近の3事業年度で平均した「1つ下位の職階 から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷ 「1つ下位の職階 から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上であることとされています。
5. 多様なキャリアコース
多様なキャリアコースも重視されます。直近の3事業年度で、大企業では以下の2項 目以上(非正社員がいる場合はAを含む必要がある)、中小企業では1項目以上の実績があることが必要です。
- A:女性の非正社員から正社員への転換
- B:女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
- C:過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
- D:おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「えるぼし認定、プラチナえるぼし認定」
えるぼし認定は3つの段階に分かれる
「えるぼし認定」は3段階に分かれています。上記5つの項目で、えるぼしの基準を満たしている項目数に応じて取得できる段階が決定されるのです。
- ・5つのうち1?2つの基準を満たす:1段階目
- ・5つのうち3?4つの基準を満たす:2段階目
- ・5つ(全て)の基準を満たす:3段階目
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「えるぼし認定、プラチナえるぼし認定」
令和2年6月から「プラチナえるぼし」認定がスタート
令和2年6月より、「えるぼし認定」を受けている企業の中でも、次の要件を満たしている企業に対して「プラチナえるぼし」の認定もスタートしました。
- ・えるぼし認定の5つの評価項目を、プラチナえるぼしの基準で全て満たしている
- ・策定した一般事業主行動計画に基づく取組を行い、当該行動計画の目標を達成している
- ・男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任している
- ・女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く)のうち、8項目以上を 「 女性の活躍推進企業データベース 」 で公表している
企業にとってのえるぼし認定を受けるメリット
えるぼし認定を受けることで、企業にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは主に2つのメリットについて解説します。
企業イメージが向上する
まずは、企業イメージの向上です。えるぼし認定を受けると、厚生労働省のホームページに企業名が掲載されます。さらに、自社の製品や広告、採用活動でもえるぼし認定マークを使用することができるのです。
これらの結果、女性の活躍を推進している企業としてイメージが向上することで、優秀な人材の確保につながることが期待できるでしょう。
公共調達や低利融資の優遇措置を受けられる
次に、公共調達や低利融資の優遇措置が挙げられます。えるぼし認定は、ワークライフバランスの推進を評価する項目に当たるため、公共調達を行う際には加点評価を受けることができるのです。
また、日本政策金融公庫が行っている「企業活力強化貸付」では、一定の要件を満たしたえるぼし認定企業に対して低利融資を実施しています。
えるぼし認定の申請方法
えるぼし認定は、女性の活躍に関する現状把握と一般事業主行動計画の策定、届出や情報公開が完了した後に申請することができます。
2022年4月に改正された、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定フローについては、下記記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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【2022年改正】女性活躍推進法の改正内容と企業に求められる対応を解説
えるぼし認定のために企業ができること
メリットの大きいえるぼし認定を受けるために、企業はどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。
ライフイベントに合わせて長く働ける環境の整備
まずは、ライフイベントに応じて長く勤務することができる職場環境を整えることが大切です。男性と比べて、女性は出産や子育てなどのライフイベントが仕事に影響を与えるケースも多いでしょう。ライフイベントに合わせた休職制度や、その後の復帰のしやすさ、リモートワークの活用など柔軟な働き方など、長く働き続けられる制度を充実させる必要があります。
女性管理職の比率向上
次に、女性管理職の比率を向上させることも大切でしょう。内閣府では2003年に「2020年までに女性管理職比率を30%にする」という目標を掲げていました。このように国をあげて取り組んでいる課題ではあるものの、未だ女性管理職比率はなかなか向上していないのが現状です。積極的に女性を管理職に登用することが求められます。
心身の状態を相談できる窓口の設置
最後に、女性社員が心身の状態を相談できる窓口を設置することも大切です。女性は日々働くにあたって様々な健康課題を抱えています。それらを相談できる窓口を社内に設置することも重要でしょう。一例として産業医が挙げられます。産業医によって、専門的な知識で健康課題やメンタルヘルスの改善を推進できることが期待できるでしょう。
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産業医とは?役割や業務内容をわかりやすく解説
まとめ
企業のイメージ向上など、メリットの大きなえるぼし。認定を受けるためには、女性たちが長く働ける職場環境を整備することが大切です。女性たちのライフイベントや健康課題にも企業として対応していく必要もあるでしょう。専門知識をもつ産業医などの相談窓口も設けることも有効です。女性たちのはたらきやすい環境を整備することが、企業のメリットにもつながるでしょう。
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