定期的に従業員のストレスを把握するために行われるストレスチェック。チェック後に高ストレス者と判定された従業員には、本人の希望に応じて産業医など医師による面談を実施する必要があります。面談後には、産業医の意見をもとに職場環境の改善に取り組むことも、従業員の健康を守るために有効です。今回は、ストレスチェック後の高ストレス者への産業医面談について解説します。
ストレスチェック後の高ストレス者への産業医面談の実施
- 産業保健
産業医面談の前に実施されるストレスチェックの概要
産業医面談前には、どのようなストレスチェックが行われるのでしょうか。まずは、ストレスチェックの概要について解説します。
ストレスチェックは企業の義務
ストレスチェックは、従業員50名以上の企業で義務化されている制度で、定期的に従業員のストレスの程度を把握することができます。ストレスチェックを実施しなくても罰則はありませんが、ストレスチェックの結果を報告する義務があります。
また、ストレスチェックを行ったにもかかわらず労働基準監督署に報告しなかったり、あるいは虚偽内容を報告したりした場合は、50万円以下の罰金を支払う必要があり注意が必要です。
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ストレスチェックは環境改善に活用できる
ストレスチェックによって、産業医面談の対象者となる高ストレス者を抽出することができます。さらに、ストレスチェックの結果分析を通して職場の環境改善に役立てることも可能です。たとえば、高ストレス者が多い部署が分かれば、その部署の課題の把握や改善策の立案につながるでしょう。
高ストレス者から申し出があった場合、産業医の面談は義務
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員には、希望すれば産業医など医師の面接指導を受けることができることを伝える必要があります。希望の有無を確認し、本人の申し出があった場合、事業者は産業医など医師との面談を行わなければなりません。
高ストレス判定者が産業医面談を受けない理由
高ストレス者と判定されても、産業医面談を希望しないケースもあります。それには、たとえば以下のような思いがあるようです。
- ・上司や同僚に面談内容を知られてしまうのが怖い
- ・就業中に自分だけ抜けると何か言われそうで嫌だ
- ・面談後に不当な配置異動や退職勧奨があるかもしれない
など
このような従業員が抱く懸念については、事前に解消しておくことが大切です。
実際に、事業者がストレスチェックの結果を理由に、従業員に降格や解雇などの不当な取り扱いを行うことは禁止されています。
医師との面談の結果、従業員の健康を守るために、業務内容の変更や役職を外す対応などが必要となるケースもあります。このように就業上の考慮を行う場合も、事前に本人の同意を得た上で、医師は会社に意見をあげることを伝えておくことが大切です。
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厚生労働省「面接指導の具体的な進め方と留意点」
面談後の産業医の意見を受け、職場改善に取り込む
ストレスチェック後の面談で最も避けなければならないのは、面談を実施しただけで、高ストレス者に対して何も対策を行わないことです。チェック結果に基づき適切に就業上の措置を実施しないと、従業員のストレスを軽減・解消することができません。結果的に、休職や退職につながるリスクも考えられます。
ストレスチェック後の面談を行ったら、産業医の意見をもとに、高ストレス者の就業改善に努めることが大切です。たとえば、長時間労働が続いているような部署があれば、人員の補充や業務内容の見直しなど、残業を減らすような対策が必要になるでしょう。
また、産業医に相談しやすい体制を築くことも有効と考えられます。ストレスチェックの結果をもとに、日頃からメンタルヘルスに対する対策を講じることが大切です。
まとめ|産業医と連携して高ストレス者の対応を
ストレスチェック後、高ストレス者と判定された従業員の面談対応はしっかりと行うことが大切です。何も対策を講じなければ、休職や退職などにつながり人員を大きく増やさなければならない場合も考えられます。
ストレスチェックに適切に対応でき、従業員のメンタルヘルスを守るために日頃の取り組みについて意見、助言を積極的にもらえるような産業医を選任しておくことも大切でしょう。
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