近年、「従業員満足度」向上に関心が高まっています。企業が従業員満足度の向上を図ることができれば、従業員のエンゲージメントを高め、結果的に生産性や優秀な人材の確保につながります。
さらに、顧客満足度の向上も期待できるのです。従業員満足度について、エンゲージメントとの違いや、取り組む際のポイントや事例をご紹介します。
従業員満足度とエンゲージメントとは?違いや職場環境改善の取り組み方法まで紹介
- 産業保健

従業員満足度とは
従業員満足度とは、職務内容や労働環境、同僚など職場の人たちとの関係、給与や福利厚生などに対して、従業員がどれだけ満足しているかを表す指標のことを指します。「ES:Employee Satisfaction」とも呼ばれます。
従業員満足度(ES)とエンゲージメントの違い
従業員満足度(ES)と似た指標に「エンゲージメント」がありますが、両者の違いは何なのでしょうか。
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従業員満足度が高ければ従業員エンゲージメントも高い傾向に
従業員エンゲージメントとは、企業の理念に共感し、自ら貢献したいという意欲を持って働いている状態のことを指します。従業員の企業に対する「信頼」や「帰属意識」を量ることに役立つ指標です。
また、従業員満足度が低い状態で、従業員エンゲージメントを向上させることは難しいと言われています。従業員満足度が高ければ企業への誇りにつながり、結果的に従業員エンゲージメントが高い状態を維持できると考えられます。
従業員満足度(ES)の向上で期待できる効果
企業が従業員満足度の向上に取り組むことで期待される、3つの効果(メリット)をご紹介します。
生産性の向上
まずは、生産性の向上が挙げられます。従業員満足度は仕事に対する意欲につながるため、積極的に業務にあたる従業員が増えれば生産性も向上します。また、職場の良好なコミュニケーションを促進し、新規事業など新たな産業につながる効果も期待できるでしょう。
人材確保、離職率の低下
次に、人材の確保や離職率の低下が期待できます。従業員満足度が高ければ、離職を検討する従業員が少なくなり、結果的によい人材を確保し続けることができるでしょう。また、従業員が友人や知人を紹介することで、新たに優秀な人材を確保できる効果も期待できます。
顧客満足度の向上
最後に、顧客満足度の向上があります。前述したように、従業員満足度が高ければ、エンゲージメントも高くなる傾向があります。すると、よりよい自社製品やサービスを生み出そうとする意欲が高くなり、結果的に顧客満足度が高くなる効果が期待できるのです。
従業員満足度(ES)の改善に必要な5つのポイント
従業員満足度を改善するためには、以下の5つの取り組みが重要です。
- ・労働環境を整える
- ・人材配置を適正化する
- ・評価制度を改める
- ・企業の理念を浸透させる
- ・健康経営に取り組む
労働環境を整える
まずは、労働環境を整えることが大切です。たとえば、フレックス制度の導入や、残業時間の管理などによって、より働きやすい環境を整備することが従業員満足度の改善につながるでしょう。
人材配置を適正化する
人材配置を適正化することも大切なポイントです。適切な配置は、従業員が自身の能力を活かして働くことができているという納得感につながります。また、従業員満足度を高めるために、ジョブ型雇用を導入するのもおすすめです。これは、個人の能力や経験に応じた人材配置を前提とする雇用のことを指します。
評価制度を改める
評価制度を改めることも、重要なポイントの1つです。頑張ったことがきちんと評価される環境を整えることができれば、従業員満足度の向上につながるでしょう。たとえば、個人に合わせた目標を設定し、それに対して評価指標を設けることも有効だと考えられます。
企業の理念を浸透させる
会社が目指している方向性が従業員に共有されないままだと、目指す方向性にバラつきが出て、結果的に従業員満足度の低下にも影響してしまいます。
そのため、企業理念をわかりやすく噛み砕いて説明することで、従業員が会社の目指している方向性を理解できるようにしましょう。
健康経営に取り組む
最後に、健康経営に取り組むことが挙げられます。健康経営とは、経営的な視点で従業員などの健康管理を捉え、戦略的に実施していくことをいいます。良好な経営状態を維持するために、従業員の心身の健康維持や増進の取り組みを実施することが従業員の意欲や生産性の向上につながるでしょう。
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従業員満足度(ES)向上の取り組み事例
具体的にどのような取り組みが行われているか、事例をご紹介します。
労働環境改善の取り組み事例
労働環境改善の取り組み事例として、サイボウズ株式会社をご紹介します。同社は、「100人いたら100通りの働き方」という考え方を掲げ、多様な働き方を推奨しています。具体的には、自由な副業を認めていたり、従業員が勤務時間や場所を決められる制度を導入していたりします。これらの取り組みもあり、離職率を大幅に減らすことに成功しているのです。
人材配置適正化の取り組み事例
人材配置適正化の取り組み事例として、株式会社ディー・エヌ・エーをご紹介します。同社は、人事や直属の上司の承諾を受けることなく異動できる制度を導入しています。このような制度を従業員が利用することで、自身の希望を叶え、やりがいを持って仕事に取り組む効果が期待できるでしょう。
また、結果的に異動が実現しなくても、自身がキャリアを真剣に考え直すきっかけとなり、新たな目標を見つけることができたといった変化が生まれています。
評価制度改善の取り組み事例
評価制度改善の取り組み事例として、株式会社ISAOをご紹介します。同社は、「階層ゼロ、役職ゼロ」という考え方を取り入れ、階層や役職、部署を撤廃しています。
上下関係をなくし、従業員それぞれが持つ強みを総合的に評価できる体制を整え、従業員自身がキャリアを切り開けるような仕組みを取り入れたことで、モチベーションの向上につながっています。
企業の理念を浸透させる
企業の理念を浸透させる事例として、 株式会社リクルートホールディングスをご紹介します。同社では、多くの部署で「アワード」と呼ばれる仕事表彰の仕組みが取り入れられています。ビジョンに合った事例を各従業員が発表する機会が設けられていて、それぞれの発表にフィードバックとアドバイスが与えられます。さらに発表の中で審査を行い、多数決で代表作品が選出されます。この仕組みは、各職場→部署→事業部と審査が進んでいく中で、理念に則した提案や行動がどのようなものか、共通認識が生まれていく効果あるのです。
健康経営の取り組み事例
健康経営の取り組み事例として、田辺三菱製薬株式会社をご紹介します。同社は、積極的に健康経営に取り組んでいます。例えば、健康保険組合と協働して禁煙の支援を行う卒煙支援の強化を行っていたり、メンタルヘルス対応ガイドブックを作成してメンタル不調への気づきや、休職・復職への対応などの管理職の役割を明記してラインケア研修を行っています。従業員の健康改善・維持を図ることで、従業員満足度の向上につなげているのです。
まとめ|従業員満足度向上のために、健康経営などに取り組んで
近年、注目されている「従業員満足度」。従業員満足度を向上させることができれば、従業員のエンゲージメントが高まり、優秀な人材の離職を防ぐことにつながります。さらに、生産性や顧客満足度の向上も期待できるのです。ご紹介したポイントや事例も参考に、従業員満足度向上に取り組むことをおすすめします。
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