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【人事労務担当者向け】安全衛生委員会とは 設置基準、構成メンバー、活用方法から罰則まで

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更新日: 2024.09.26
【人事労務担当者向け】安全衛生委員会とは 設置基準、構成メンバー、活用方法から罰則まで
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】新井久美子(産業医) 研修終了後10年以上救急医として従事、自身のライフスタイルの変化があり産業医資格を取得。現在は嘱託産業医として複数社契約し、産業保健分野を中心に活動している。オンライン面談などを活用しつつ、メンタルヘルス対策や健康相談を重視している。

【監修】新井久美子(産業医) 研修終了後10年以上救急医として従事、自身のライフスタイルの変化があり産業医資格を取得。現在は嘱託産業医として複数社契約し、産業保健分野を中心に活動している。オンライン面談などを活用しつつ、メンタルヘルス対策や健康相談を重視している。

企業で働く人の安全を図り、労働災害(労災)を防止する目的に設置される「安全衛生委員会」。安全衛生委員会は、安全委員会と衛生委員会が統合されたもので、業種や労働者の人数によって設置義務が異なります。安全委員会とは何か、安全衛生委員会の目的である働く人の安全・健康を守るためにはどのように活用していけばよいのか、解説していきます。

安全衛生委員会とは なぜ設置するのか

安全衛生委員会とは_1.jpg

安全衛生委員会とは なぜ設置が必要か

安全衛生委員会は、安全委員会と衛生委員会を統合した委員会です。安全委員会、衛生委員会、安全衛生委員会は、いずれも労働者と事業主から選出された代表が、労働現場における安全衛生の管理・運営を行います。労働者の意見を反映させながら職場の安全対策や衛生管理を進めることで、労働者の健康と安全を確保する役割を担っており、安心して働ける労働現場を実現するための重要な組織です。

安全委員会、衛生委員会については労働安全衛生法で設置が義務付けられています。かつて高度経済成長期(1955年頃から1973年頃まで)には、1年の労働災害(労災)による死亡者が6,000人を超えていました。その背景には日本における労働安全の法整備が追いついていなかったことが考えられ、そのような状況を改善すべく、労働基準法だけでは明確化できなかった労災防止のための基準、責任体制の明確化、自主的活動の推進などを総合的、計画的に推進することを目的とし、昭和47年に可決成立したのが労働安全衛生法です。この法律は、労働者の安全と健康を確保すると共に、労働災害の予防も目的としています。

そんな労働現場における安全衛生の規定を明確化し、労働者の権利保護を強化するために、安全委員会や衛生委員会の設置が義務付けられたという経緯があります。

安全委員会と衛生委員会、どこが同じでどこが違うか

安全委員会と衛生委員会はどちらも組織や事業所における安全や健康に関する問題に取り組む組織です。しかし、それぞれの重点項目や対象範囲には違いがあります。

安全委員会は主に物理的な危険や事故予防に焦点を当てており、労働安全や緊急時の対応などを扱います。一方、衛生委員会は主に衛生管理や病気の予防などの健康に関連した問題に取り組んでいます。両委員会は共通の目的をもちながらも、異なる側面で組織や事業場の安全と健康を保護しています。

安全衛生委員会の設置基準

表-1 安全衛生委員会_図表.png

参考:厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について」より改変

※安全委員会及び衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができます。

安全委員会、衛生委員会の設置基準は労働安全衛生法によって定められています。衛生委員会は、業種に限らず常時50人以上の労働者が従事している事業場が対象となり、事業場ごとに衛生委員会の設置義務があります。

一方、安全委員会は業種によって設置義務が変わります。林業、鉱業等の業種では50人以上の従業員がいる場合に設置義務があります。業種2にあたる業種では100人以上の場合に設置義務があります。どちらも業種も従業員が50人を超える場合には衛生委員会は設置の義務があります(表-1)。

安全委員会と衛生委員会のどちらに対しても設置義務がある場合には、安全衛生法19条の定めにより二つの委員会を統合して安全衛生委員会を設置することができます。

委員会の構成や活動内容に関しても、法律や規則により定められています。委員会の活動内容としては、安全衛生の計画立案や実施状況の監視・評価、労働災害の調査・分析、安全衛生意識向上のための啓発活動などが含まれます。さらに、法令や規則の遵守、安全衛生管理システムの構築や運営なども重要な役割です。

安全衛生委員会の設置義務違反した場合の罰則

安全衛生委員会の設置義務に違反した場合には、労働基準法によって罰則が定められています。

違反の内容が軽微な場合は、労働基準監督署からの警告や指導が行われることがあります。違反行為の是正を促すための措置で、警告・指導で委員会が規定通りに行われればそれ以上の罰則は課されません。しかし、警告されたにもかかわらず改善がなされなかった場合には、労働基準監督署から行政処分(過料や命令等)が課せられることがあります。例えば、勧告に従わず委員会を設置しなかった場合には、50万円以下の罰則となります。また、重大な違反があった場合も行政処分が科されることがあり、さらに違反した内容や故意の場合では、刑事罰が科せられることもあります。

安全衛生委員会の構成メンバーに産業医は必須

安全衛生委員会とは_2.jpg

安全衛生委員会 構成メンバーの条件

表-2

安全委員会 衛生委員会 安全衛生委員会
委員の構成

総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者(1名)

安全管理者

労働者(安全に関する経験を有する者)

総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者(1名)

衛生管理者

産業医

労働者(衛生に関する経験を有する者)

総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者(1名)

安全管理者

衛生管理者

産業医

労働者(安全に関する経験を有する者、衛生に関する経験を有する者)

※ 1以外の委員については、事業者が委員を指名することとされています。なお、この内の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名しなければなりません。

参考:厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について」より改変

安全衛生委員会の委員は、安全委員会と衛生委員会双方を合わせたすべてのメンバーで構成します。総括管理を行う者1名、安全管理者、衛生管理者のうち事業者が指名した者、産業医のうちから事業者が指名した者、衛生や安全管理に関する経験を有する者で構成されます。構成する委員の人数や任期についての定めはありません。

業種や事業場の規模によって総括安全衛生管理者の選任要件があり、実質的に現場を統括管理する現場監督者や責任者が総括管理を行う者にあたります。安全管理者、衛生管理者は一定の資格が必要です。安全管理者、衛生管理者に選任義務がない事業場の場合には、兼任している場合もあります。

産業医が構成メンバーに加わる意味

労働者の健康管理を行う専門家である産業医は、衛生委員会および安全衛生委員会の構成メンバーです。産業医が安全衛生委員会に出席し、出席できなかった場合でも委員会議事録などの資料を定期的に共有することで、安全衛生上必要な措置について事業場の労働者のために、専門的なアドバイスをすることが可能です。審議の内容は多岐にわたりますが、定期健康診断や特殊検診のルール作り、安全衛生に関する規定の作成、作業環境測定の結果の評価や必要な対策、疾病の予防活動に関する審議など、さまざまな議論の場に産業医が参加することで、よりよい衛生管理を実現できます。

産業医との連携で安全衛生委員会を活性化

安全衛生委員会とは_3.jpg

安全衛生委員会の開催基準

労働安全衛生規則(第23条)では、安全衛生委員会は毎月1回以上の開催が必要とあります。急遽議題が発生した場合などには、追加で開催される場合もあります。また議事録は3年間の保存義務があります。

産業医は安全衛生委員会の構成メンバーではありますが、会議への出席自体は義務付けられておらず、必須ではありません。事業場によっては月1回程度の産業医訪問日に合わせて会議を実施できないこともあります。その場合には、産業医が訪問した際に議事録や委員会で議題にのぼった内容の資料を共有することで、アドバイスを受けることができます。

とはいえ、実際に産業医が委員会に参加し、健康障害の防止、健康の保持のための具体的な対策についてその場で意見を述べてもらうことが望ましいでしょう。

安全衛生委員会で取り扱われる調査審議事項

健康障害を防ぐための基本的な対策や、健康増進のための対策、労働災害の原因検索や再発防止対策、長時間労働の防止や対策、メンタルヘルス対策などが含まれます。

すべての事項で産業医が専門的なアドバイスや具体策を提示することができますが、特に昨今問題になっている長時間労働やメンタルヘルス対策については、産業医や産業保健職のメンバーが知見を持ち合わせていることが多いため、産業医や産業保健職を含めて委員会で議論するのがよいでしょう。

産業医との連携で安全衛生委員会を活性化

産業医が安全衛生委員会に積極的に出席してもらうために、事前に決めておくとスムーズにいくポイントがいくつかあります。

まず、安全衛生管理において現状どのような問題があり、産業医にどのようなアドバイスが欲しいのか明確にしておきましょう。産業医に委員会への参加する意味を理解してもらうことで、産業医の出席が得やすくなるでしょう。

産業医と委員会メンバー間で普段からコミュニケーションをとることで、産業医も委員会へ出席しやすくなると思われます。そのために、産業医が巡視するときなどに従業員に紹介しておくとよいでしょう。また、産業医には、必要な情報は適宜伝え、共有しましょう。委員会への参加以前にメールなどで次の議題テーマを共有しておくことや、委員会で話し合った議題について改善成果や具体的な効果などを共有することで、産業医も積極的に出席しやすい環境になります。

委員会の開催日程を調節する際に、産業医が参加しやすい日程などを事前に提示してもらい、話し合うことも出席を促すためのポイントとなります。

まとめ:充実した安全衛生委員会を運営するために

充実した安全衛生委員会を運営するには、委員会の目的の明確化とメンバーへの周知、定期的な情報交換に加え、健康管理のプロである産業医に積極的に参加を促すことが重要です。

ぜひ安全衛生委員会についての疑問を産業医と共有して、解決の糸口を見つけてください。

公開日: 2024.09.26
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