従業員の健康を管理するために、企業には、定期健康診断の実施や医師による就業判定が義務付けられています。具体的にどのような対応が必要になるのでしょうか。
本記事では、健康診断後に医師が就業の持続可能性を判断する就業判定と、異常所見が見られた従業員に対して企業がおこなう事後措置について説明します。
健康診断後の対応では、産業医との連携が欠かせません。就業判定や意見書の作成、そして保健指導など、産業医との連携が重要となるポイントについても解説します。
従業員の健康を管理するために、企業には、定期健康診断の実施や医師による就業判定が義務付けられています。具体的にどのような対応が必要になるのでしょうか。
本記事では、健康診断後に医師が就業の持続可能性を判断する就業判定と、異常所見が見られた従業員に対して企業がおこなう事後措置について説明します。
健康診断後の対応では、産業医との連携が欠かせません。就業判定や意見書の作成、そして保健指導など、産業医との連携が重要となるポイントについても解説します。
まずは、定期健康診断を実施します。健康診断の結果により、自覚症状がない体内の何らかの異常が見つかるケースもあります。
これらの異常を健康診断で早期に発見し、適切な措置を行うことで、生活習慣病やそれに関わるがん・心疾患・脳血管疾患といった病気の発生リスクを抑えられます。
従業員の健康状態を保つことにより、休職・退職を防ぐことができ、また生産性も上がるため、企業としても健康診断は重要です。
そのため、従業員全員にきちんと定期健康診断を受診してもらうことが大切です。
定期健康診断の結果が出たら、従業員が問題なく就業することができるか産業医の意見をもらう必要があります。産業医の意見を参考に、必要に応じて対象となる従業員の就業場所の変更や作業の変更などの措置を講じる事後措置を実施します。
常時50名以上の従業員を雇用する企業は、定期健康診断の実施後に健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません。そのため多くの企業が、産業医による就業判定を行っています。
労働安全衛生法で複数の実施義務があるので、流れについては次章で詳しく解説します。
もしも現状では就業上の制限が必要ない場合であっても、将来的に就業を行うことが難しくなると予想されるケースもあります。健康状態の悪化をできる限り防ぐために、産業医などによる保健指導や受診勧奨を行う必要があります。
しかし、この保健指導や受診勧奨は、法律的には努力義務とされています。罰則もないため、実施に至らない企業も少なくないといわれています。
健康診断の実施と就業判定に関する流れには、大きく分けて5つのステップがあります。 それぞれ詳しく解説していきます。
労働安全衛生規則は、1年に1回、企業は常時雇用する従業員に対して医師による定期健康診断を行う義務があると定めています。これは、正社員に限りません。たとえばアルバイトなどであっても、一定の要件を満たす場合には定期健康診断の対象となります。
健康診断が終わり、医療機関などから結果を受領したら、異常所見のある従業員を把握する必要があります。なお、常時50人以上の従業員を雇用する企業では、労働基準監督署へ定期健康診断結果報告書を提出しなければなりません。また、企業は受領した健康診断結果を5年間保管する必要があります。
健康診断結果を従業員本人へ通知します。従業員が自身の健康状態を把握し健康管理を行うことができるよう、遅延することなく通知することが大切です。また、何らかの異常が見つかった場合は、必要に応じて二次健康診断の受診を勧奨します。
企業は、健康診断結果で異常所見が見つかった従業員に対して、就業にあたりどのような措置を講じるべきか医師などの意見を聴取しなければなりません。
意見聴取のために、従業員の勤務環境や時間などの情報を提供するとともに、必要に応じて産業医による職場巡視の機会などを設ける場合もあります。なお、この意見聴取は、健康診断を実施した日から3か月以内に行う必要があります。
聴取した医師等の意見を踏まえて、就業を行うにあたり必要な措置を講じます。企業は、医師による就業判定とともに従業員本人の希望も考慮して、必要な事後措置を決定します。たとえば、労働時間を短縮したり、仕事内容を変更したりするケースがあるでしょう。
健康診断の結果、何らかの異常が見つかった従業員に対しては、就業するにあたり講じるべき措置について医師等の意見聴取を行わなければなりません。意見聴取を行う際は、以下の3つの区分で医師等が就業判定を行い、その結果に基づき就業上の措置を決定する必要があります。
従業員の健康を守るために、さまざまな場面で産業医の意見を取り入れることが大切です。健康診断の後には、異常所見のある従業員の健康診断結果を踏まえて、勤務が可能であるか、また勤務時間や内容に変更すべき点があれば、そちらについての意見書を作成します。これは具体的には、「健康診断個人票」の医師の意見の欄に産業医が就業判定を記入する形式です。
産業医の報告書に法的効力はありませんが、無視をして従業員の健康が悪化すると安全配慮義務の責任を負う可能性もあります。企業は、産業医の意見をしっかりと確認し、対応するようにしましょう。
健康診断後、従業員が健康を守りながら勤務するために、企業は就業判定を重視しがちかもしれません。しかし、健康診断を機に保健指導の取り組みも併せて行うことが大切です。そのためには、産業医との連携が欠かせません。
保健指導では、主に生活習慣病予備群である方たちに対して、状態を悪化させず健康を維持できるようサポートします。また、日常生活が乱れていると、メンタル不調を引き起こすケースもあります。従業員の心身の健康を守るためには、必要に応じて産業医による指導などを取り入れる必要があるでしょう。
健康診断実施後から就業判定までには、法律で定められた実施事項がたくさんあります。従業員の健康被害を防ぐためには、産業医による就業判定などが大切になります。
産業医との連携では、就業判定のための意見書作成が重視されがちです。しかし、健康診断の結果をもとに、保健指導といった長期的な従業員の健康管理ができる体制を整えることも大切といえるでしょう。産業医と連携しながら、長期的な視点で従業員の健康を守っていきましょう。