衛生委員会とは
衛生委員会を設置する目的は?
衛生委員会は主に衛生管理や病気の予防などの健康に関連した議題を取り扱う委員会です。
そこには健康に関する目標設定、年間計画、産業保健スタッフからの衛生講話なども含まれます。
衛生委員会の設置には労働安全衛生法による規定があり、業種に限らず常時50人以上の労働者が従事している事業場では、事業場ごとに衛生委員会の設置義務があります。衛生委員会と似ている委員会に安全衛生委員会がありますが、こちらは主に物理的、または取り扱う化学製品などにおける危険性のリスク管理や事故の予防に焦点を当てているという点で異なります。
衛生委員会で話し合われるテーマ
衛生委員会で話し合われるテーマは事業担当者と相談のうえ決めますが、多くは事業場ごとの健康課題や季節ごとに増える病気についてなどがテーマになります。健康診断時期であれば、その具体的な内容や日程、対象者なども議題となります。また健診結果がでた後、例えば事業場内で脂質異常症や高血圧などで指摘を受ける人が多い場合には、脂質異常症とは? 生活習慣病とは? などがテーマに選ばれることもあります。夏場でしたら熱中症や熱中症指数、冬場ならばインフルエンザや感染症の予防法などがタイムリーな議題といえるでしょう。
また厚生労働省が健康トピックについて年間行事予定を公表しており、そのトピックに合わせてみるのもよいかもしれません。2024年度でしたら、5月から9月にかけて「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」、7月には「肝臓週間」「日本肝炎デー」が計画されています。ほかにも10月には「世界メンタルヘルスデー」、11月には「過労死等防止啓発月間」「過重労働解消キャンペーン」「テレワーク月間」など働く人たちの心身の健康に関するテーマが組まれています。あらかじめ年間テーマを決めておくとよいかもしれません。
▼参考資料はコチラ
令和6年度(2024年度) 年間行事予定(週間・月間)
衛生委員会の議事録の作成項目・作成のコツ
衛生委員会の議事録とは
毎月、衛生委員会の実施後には議事録を作成しなくてはなりません。その議事録は3年間保管することが、安全衛生規則に定められています。
議事録の作成者についての明確な規定はありませんが、一般的には委員会に出席する衛生管理者や総務担当者が担当します。
衛生委員会の議事録は委員会に出席していないすべての従業員に対して、周知させる必要がありますが、周知方法については規定がないので、掲示板に掲示する・社内メールで配信するなど、事業場にあった方法で行います。議事録を公開するだけではなく、委員会で話し合われたテーマをポスターなどにビジュアル化しわかりやすくするなど、会社全体で健康に対する意識を高めていけるように取り組むとよいでしょう。
衛生委員会の議事録の作成項目
【開催日時・開催場所】
毎月開催するので、「いつ」「どこ」で開催したのかは明確にしておくと、議事録の整理にも便利です。
【出席者】
誰が委員会に出席したかは重要です。そもそも委員会の委員は議長(委員長)、総括安全衛生管理者(必要な場合)、衛生管理者、産業医(出席義務の規定はない)であること、議長以外の委員の半数は労働者側であることなど基本事項の確認もしておきましょう。
毎月規定通りに開催しているか、委員会メンバーが適切かどうかは、労働基準監督署の事業場調査などで指摘されることが多い点です。法令遵守を心がけましょう。
【議題(報告事項や審議事項)】
衛生委員会における議題は調査審議事項として労働安全衛生規則に定められています。
主に健康障害や労働災害が発生した場合の調査や対策、健康の保持増進に関することを議題とします。健康障害のうち、昨今特に問題となっている長時間労働の実態調査やストレスチェックの実施に関すること、長時間労働者や高ストレス者の人数把握や対策、就業配慮についての取り組みを委員会で話し合い、議事録に記載しましょう。
健康診断に関しては実施計画、実施した際には対象者や人数の把握、判定結果や産業医による就業判定をした人数、事後措置の有無、内容に関しても記載する必要があります。
【合意事項】
委員会で話し合われた決定事項や合意事項は必ず記載し、すべての労働者に周知するようにします。
【産業医からのコメントや産業医講話】
産業医が委員会に出席している場合には、委員会中に産業医から医学的なアドバイスをもらうことができます。また産業医による健康保持、増進を目的とした衛生講話を行うこともあります。講話の内容は委員会だけに限らず、その事業場で働くすべての人に公開し、健康意識を高めていくのに活用しましょう。
【まとめ、次回への申し送り事項など】
委員会の総括や次回までの課題、調査事項なども記載しておきましょう。
作成テンプレートを活用しよう
衛生委員会の議事録に特定のフォーマットはありません。ですが、議事録の作成項目を入れた基本のフォーマットを作成しておけば記載事項などをもれなく記載することが可能です。基本フォーマットを作成する時間が確保できない、議事録の作成に慣れていないなどの場合は、「衛生委員会議事録テンプレート」をダウンロードすることで、簡単に的確な議事録を作成することができます。
▼衛生委員会議事録テンプレートはコチラ
(安全)衛生委員会議事録テンプレート
衛生委員会「議事録」の活用法・保管ルール
「議事録」を共有し産業医から意見をもらう
毎月の衛生委員会には産業医が出席することが望ましいですが、訪問日の調節ができないなどの理由で出席できないこともあります。そのような場合には、産業医と委員会の議事録を共有します。社内メンバーだけでは得られない専門的な意見を交えることで、より議論が深まり、充実した委員会運営を目指すことができます。特に健康診断結果などによる事後措置について疑問が生じた際や健康問題、労災が発生した際には、必ず産業医に意見を求めましょう。
「議事録」から産業医がアドバイスした例
- 健康診断後に開催された衛生委員会で、就労制限などの措置が必要なほどのハイリスクな労働者はいないものの、脂質異常症を指摘される労働者が増えていると委員会で共有された。
産業医に議事録を共有して健康増進に関して意見をもらい、さらに「脂質異常症とは何か」「将来どのような健康問題につながるのか」という脂質異常症のリスクを紹介するポスターをつくってもらいました。そのポスターを掲示したところ、脂質異常症を指摘されていた労働者数名が産業医に健康相談を申し込み、産業医の積極的な勧めにより2次検診を受け、医療受診へとつながりました。この労働者たちは産業医作成のポスターを見なければ2次検診もするつもりはなかったといっています。
この一例は、委員会ででた議題や健診結果を産業医と共有することで、健康保持増進につながった良い例です。
ただし、すべての問題がすぐに解決できるとは限りません。特に労災などは、すでに予防策が十分取られた状態でも起こり得ることがあります。事実関係を確認し、委員会メンバーで大いに議論を交わし、さまざまな問題を解決していく必要があります。
衛生委員会「議事録」の保管について
衛生委員会の議事録の保管は3年間ですが、保存方法は磁気テープ、磁気ディスクなどに準ずる記録媒体に記録して、必要時に労働者が確認できるようにしておく必要があります。
議事録を保管しておくことで、労働現場で発生した問題について委員会での決定事項を後から確認することもできます。委員会の時間内の記録ではなく、その後の労働環境改善や事業場の健康保持・増進のために、ぜひ議事録を活用しましょう。
まとめ: 衛生委員会の議論を将来の労働環境改善に活かす
今回は、衛生委員会の議事録について解説しました。議事録は、事業者と労働者が一緒になって自分たちの働く現場の衛生管理や病気予防について議論を重ねた委員会の記録です。働く現場をよくするために積極的に活用しましょう。議事録の記載方法や具体的なアドバイスに関しても、産業医や産業保健師などの産業保健スタッフに相談してみてください。専門家ならではの意見に改善の糸口が見つかることと思います。