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産業医とは?3つの役割と7つの職務内容、選任義務、選び方を解説

  • 産業保健
更新日: 2024.06.19
産業医とは?3つの役割と7つの職務内容、選任義務、選び方を解説
この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、両立支援コーディネーター、中小企業診断士、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、両立支援コーディネーター、中小企業診断士、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

近年では、メンタルヘルス不調や健康問題による休職者への対応が注目されています。

社員の健康や安全な労働環境を守るため、重要な役割を担うのが産業医です。ただ、産業医にどのような役割を期待できるのか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。

本記事は、産業医の導入を検討している人に向けて産業医の職務内容を解説します。法的な選任義務や貴社のニーズに合う産業医の選び方も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

産業医とは?

産業医とは1.jpg

産業医とは、社員の心身の健康と職場環境の安全を守る医師です。適切な労働環境や就業上必要な措置について、助言や相談などを行います。法的にも、50人以上の事業場ごとに産業医の選任が義務づけられています。

産業医の人数と内訳

厚生労働省が公表している日本医師会の統計(2022実施)によると、全国で34,166名が認定産業医として活動しています。

また、活動形態としては、およそ7割が嘱託産業医として1~2社の事業場を兼任しています。臨床現場と並行して産業医としても活動しているケースが多いといえるでしょう。

参考:厚生労働省「医師会が関わる産業保健の現状」(PDF資料)

産業医になるための要件

産業医になるための要件は、労働安全衛生規則14条第2項に定められています。以下のように、労働者の心身の健康管理を行うために必要な医学的知識を備えていることが条件です。

産業医とは2.png

引用:厚生労働省「労働安全衛生法に規定する産業医制度」(PDF資料)から抜粋

産業医と主治医の違い

産業医と主治医は役割が異なります。主治医は、社員に対して診断や検査、治療を行います。一方で、産業医は社員全体の健康保持増進に携わりますが、診断や治療は行いません。労働環境が健康かつ安全に維持されるよう、企業と社員の間に立ち、中立的な立場から助言します。

産業医の3つの主な役割と7つの職務内容

産業医とは3.jpg

産業医の職務として、労働安全衛生規則14条第1項には、以下の9つが規定されています。

  • ・健康診断と面接指導の実施・その結果に基づく措置
  • ・長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  • ・ストレスチェックの実施と高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置
  • ・作業環境の維持管理
  • ・作業管理
  • ・上記以外の労働者の健康管理
  • ・健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
  • ・衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

以上の9つの職務を要約し、産業医が担う3つの役割と具体的な7つの職務内容について解説します。

引用・参考:労働者健康安全機構「中小企業事業者の為に産業医ができること」(PDF資料)

役割①:社員の健康管理

産業医の役割の一つは、社員の身体面や精神面の健康管理です。健康診断やストレスチェックといった定期的に行う評価から、就業上の措置について助言します。また、長時間労働者や高ストレス者に対して面接指導を実施します。

健康診断結果にもとづく就業上の措置

健康診断結果から、社員の健康管理や就業上の配慮について助言します。健康診断は外部の医療機関に委託するケースが多いですが、その結果は「A:異常なし」「B:軽度異常」などの診断区分がつけられます。

診断区分は治療の必要性を判断する基準ですが、厳密には就業上の配慮の必要性を示す基準ではありません。そこで、会社として対応が必要なレベルかを、産業医が就業区分により判断します。

就業区分には、以下の3つのレベルがあります。現場の業務負担や人員体制などの情報と社員の健康状態を照らし合わせて判定を行います。

  • ・通常勤務
  • ・就業制限
  • ・要休業

就業区分が判定されることで、会社や社員は納得して就業上の配慮を受けられるようになります。

ストレスチェックの実施と面接指導

産業医には、ストレスチェックの実施者として企画・評価する役割もあります。ストレスチェックを行った結果、高ストレス者と判定された社員に対して、面接指導を実施します。

面接指導では、ストレスチェック結果からストレス状態の確認と問診による要因の同定です。うつ症状をはじめとした精神症状の有無についても判断され、就業上必要な配慮を会社に助言します。

また、長時間労働者への面接指導も役割の一つです。月80時間超などの時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる社員から希望があった場合に、面接指導を行います。勤務状況や業務負担、心身の状態を把握し、就業上の措置が必要かを判断します。

役割②:職場環境や組織への関与

産業医は、健康で安全な職場環境を維持するため、環境面や組織にも関与します。

2カ月に1回以上の職場巡視

職場を見回り、衛生面や作業方法の安全性をチェックする職場巡視も役割の一つです。社員の就業上の配慮や就業判定などの判断を行うため、業務内容や職場環境を正しく把握するために必要な職務です。

大規模な事業場では、限られた産業医の対応時間では1日で全ての職場巡視を行うことが難しい場合もあるでしょう。重点的にチェックする項目を選んでおくことや、日程を分けて巡視するなど工夫が必要です。

法的にも、月に1回の職場巡視が義務づけられています。衛生管理者が行った巡視結果や長時間労働者の情報などが毎月提供されていることなどを条件に、事業者の同意があれば2カ月に1回でも可能です。

参考:厚生労働省「産業医制度に係る見直しについて」(PDF資料)

衛生委員会への出席

常時使用する社員が50人以上の事業場では、衛生委員会の設置と毎月の開催が義務づけられています。衛生委員会への出席も、産業医業務の一つです。

具体的には、衛生委員会の場において、専門的な知見が必要なテーマへのコメントや助言を行います。たとえば、健康診断の有所見率やその傾向、ストレスチェックの受診率、感染症対策などのテーマです。衛生講話という短時間の研修を行うケースもあります。

就業上の配慮や復職可否に関する意見

健康診断やストレスチェック、面接指導の結果をもとに、就業上の配慮について医学的見地から意見を述べる役割があります。たとえば、以下のような意見や助言が挙げられます。

  • ・業務負担がストレスの原因→人員補充や業務体制の変更
  • ・不規則な勤務時間による睡眠障害→勤務シフトの見直し
  • ・出張による疲労蓄積→出張回数の制限

また、メンタル不調により休業した社員の復職可否の判断にも、産業医として意見を述べます。

病状が回復し、主治医が復職可能と判断しても、働ける状態まで治癒していないケースがあります。そのため、業務負担や職場環境を理解している産業医が面談を行い、業務が遂行できる水準に回復しているかを確認することが大切です。

役割③:健康に関する教育や相談

産業医として、研修や相談などの予防を目的とした職務も行います。

健康保持増進を目的とした「衛生講話」の実施

衛生委員会や職場の中で、健康や衛生管理を目的として社員に研修を行うことがあります。一般的に衛生講話と呼ばれ、社員のメンタルヘルス意識の向上や不調の予防に寄与するものです。

主な研修例としては以下のようなテーマが挙げられます。

  • ・メンタル不調の基礎知識
  • ・ストレスチェックと集団分析
  • ・食中毒や感染症について
  • ・ハラスメント対策

社員からの相談対応

社員や管理職から希望があれば、さまざまな相談に対応することも役割の一つです。健康管理や安全衛生管理、メンタルヘルス対策など産業医の職務に含まれる内容であれば、おおむね対応可能でしょう。たとえば、以下のような内容が挙げられます。

【社員から】

  • ・健康診断結果の詳しい読み方
  • ・職場の人間関係での悩み
  • ・受診の目安

【人事担当・管理職から】

  • ・衛生委員会の効果的な進め方
  • ・メンタルヘルス不調が疑われる社員への対応
  • ・社員同士のトラブル相談

以上のように、産業医は幅広い内容の相談に対応できますが、診断や治療は行えない点には注意が必要です。継続的な治療が必要な社員がいるときは、医療機関への受診をすすめましょう。

産業医の選任義務

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会社として、労働安全衛生規則13条に規定された条件にもとづいて産業医を選任する義務があります。以下の表のように、事業場の人数や業種によって異なります。事業場の社員数が増えるなど、産業医を選任する事由が発生した日から14日以内に、労働基準監督署への届出が必要です。

事業場の規模

(常時使用する社員数)

必要な産業医数

専属産業医の必要性

50人未満

選任義務なし

なし

50~499人

>1人

なし

500~999人

1人

あり(特定業務※に従事させる事業場のみ)

1,000~3,000人

1人

あり

3,001人以上

2人

あり

※労働安全衛生規則13条第1項第2号に定める有害業務および深夜業務

参考:厚生労働省「産業医の関係法令」

必要な産業医数が事業場の規模によって異なることに加え、産業医の選任形態にも条件が規定されています。勤務形態には、嘱託産業医と専属産業医がありますが、その違いについて詳しく説明します。

また、50人未満の事業場では選任義務は規定されていませんが、事業場の衛生管理を推進して社員満足度や生産性の向上を目的に顧問産業医を導入するケースもあるでしょう。そのため、顧問産業医についても、あわせて紹介します。

なお、産業医の選任義務に関する詳しい解説は、以下の記事もご覧ください。

関連記事:産業医の選任義務や基準について法律とともに解説

社員50人以上:嘱託産業医

50人以上999人以下の事業場規模では、嘱託産業医を選任します。ただし、労働安全衛生規則13条第1項第2号に定める有害な業務に該当する事業場では、500人以上の規模になると、専属産業医が必要となります。

弊社の産業医紹介サービスのワーカーズドクターズでは、嘱託産業医を紹介するサービスを提供しております。精神科や婦人科など多様な診療科経験のある質の高い産業医を紹介可能ですので、初めて産業医を探される方も、ぜひお気軽にご相談ください。

嘱託産業医サービス | 産業医の紹介ならワーカーズドクターズ

社員1000人以上:専属産業医

社員数1000人以上の事業場規模では、専属産業医を選任する義務があります。3000人を超える事業場では、2人の産業医を選任する必要が生じます。産業医は臨床活動の傍ら活動するケースが多く、常勤で会社に勤務する産業医の割合は少ないため、確保に苦労するかもしれません。

ワーカーズドクターズでは、専属産業医の紹介サービスも行っております。医師求人サイトを運営する弊社のネットワークを生かし、全国規模で産業医の紹介が可能です。また、貴社のニーズに合った産業医のご紹介も可能です。ぜひご相談ください。

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社員50人未満:顧問産業医

産業医の選任義務がない事業場においても、顧問産業医として産業医に準じた業務を依頼するケースがあります。法的義務に基づく選任ではないため、産業医の訪問頻度を柔軟に設定できます。社員への対応に困ったときにだけ相談するなど、単発での依頼も可能です。

ワーカーズドクターズでは、社員数が50人未満の事業場にも対応可能な顧問産業医の紹介を行っています。就業判定や健康診断後の事後措置など、幅広い業務に対応できる産業医をご紹介いたしますので、ぜひご相談ください。

顧問産業医紹介サービス | 産業医の紹介ならワーカーズドクターズ

産業医の探し方

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産業医は、健康診断を委託している医療機関や、近隣の病院から探す方法があります。また、医師会やエージェント会社から紹介してもらうことも可能です。50人未満の事業場規模でも、産業医を導入したい場合は、地域産業保健センターで顧問医の紹介を受けられます。

産業医を選ぶ際には、疾患や問題の対応範囲や経験を重視し、心身両面の対応ができる医師(精神科、内科領域など)を選ぶとよいでしょう。専門領域だけでなく、コミュニケーションのしやすさやフットワークの軽さなど、人柄の面にも注意して選びましょう。

契約する産業医が決定したら、契約形態を決めて契約書を作成します。契約形態は、業務委託や雇用、スポット契約の3つが一般的です。契約が締結できれば、産業医が選任されたことを管轄の労働基準監督署へ14日以内に報告しましょう。

まとめ:自社に合った産業医を選びましょう

産業医は、社員の健康と安全な労働環境を守る、健康経営にはなくてはならない存在です。健康管理から、職場の安全保持や相談対応など、職務内容は多岐にわたります。産業医が対応できる範囲を正しく理解し、自社に最適な産業医の活用方法を具体化していきましょう。

自社に合わせた産業医を選ぶことが大切ですが、どのような産業医が最適か、判断しにくいケースもあります。とくに、女性従業員が多い職場では、女性特有の相談に対応できる産業医を選ぶことも重要です。

ワーカーズドクターズでは、メンタルヘルスに関する対応経験が豊富な産業医や、女性産業医が多数登録しています。企業様の課題に合わせた提案を大切にしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

産業医の紹介、依頼、サポートならワーカーズドクターズ

公開日: 2024.06.19
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