休職者に対する復職面談は、安全配慮義務の観点で重要な役割があります。
とくにメンタルヘルス不調者への復職面談は、復職の可否のみならず、復職時の制限事項の確認をするうえで大切です。
ただし、復職の判断基準を誤らないために、復職面談にあたっておさえるべき注意点もあります。
当記事では、復職面談の目的や注意事項、復帰可否の判断で重要となるポイントから復帰後のフォローに関する事項について解説します。
休職者に対する復職面談は、安全配慮義務の観点で重要な役割があります。
とくにメンタルヘルス不調者への復職面談は、復職の可否のみならず、復職時の制限事項の確認をするうえで大切です。
ただし、復職の判断基準を誤らないために、復職面談にあたっておさえるべき注意点もあります。
当記事では、復職面談の目的や注意事項、復帰可否の判断で重要となるポイントから復帰後のフォローに関する事項について解説します。
復職面談とは、産業医と何らかの疾患や心身の不調により休職をしている従業員の間で実施される、職場復帰を見据えた事前の面談です。
復職面談の目的は主に「復職可否の判断」と「制限事項の検討」の2つに分けられます。
まずは、それぞれの詳細について見ていきましょう。
復職面談は休職中の従業員が「復職したい」と希望した場合に実施されますが、第三者の観点で本当に復職が可能な状態なのか判断しなければなりません。
特に心の健康状態は主観だけで判断するのは困難で、専門家の知見が必要です。
そのため復職面談では、休職者の業務遂行能力が回復しているか判断するために、産業医が治療状況・労働意欲・生活状況などを確認します。
仮に復職が可能と判断されたとしても、休職前と同じ業務に、同じ業務遂行能力で復帰できるケースばかりではありません。
復帰時の従業員の負担をやわらげ、再休職を防ぐことも重要です。
そのため復職面談では、病状の回復状況に応じて、復職直後の勤務時間や業務量、業務負荷などの制限を検討する必要があります。
そのほか、復職後の定期的な面談によるフォローアップや配置転換なども視野に入れ、復職支援を総合的に考えていきましょう。
復職面談の実施には、いくつかの注意事項が伴います。
従業員の復職タイミングを見誤らないためにも、以下4点の注意事項について確認しておきましょう。
前提として、復職面談を含む休職・復職に関する事項は法的根拠がなく、企業ごとに就業規則で決める領域となります。
そのため復職面談に実施義務はなく、仮に実施しなかったとしても事業者に罰則はありません。
ただし、復職面談を実施せずに従業員に病状の悪化などが見られた場合、労働契約法第5条に示される「安全配慮義務」に違反する可能性がある点には注意しましょう。
前述した通り、休職・復職に関する事項は企業ごとに就業規則で定められています。
そこで、就業規則に記載されている休職可能な日数を確認しておきましょう。就業規則を確認する際には、就業規則・労基法関連のプロである社労士などに相談することも有効です。
休職者が回復しないまま、残りの休職日数がなくなってしまった場合、退職や解雇などを行なう必要があります。
復職面談の実施自体が難しい、あるいは面談によって復職が難しいといった判断になる可能性も想定しなければなりません。
復職面談の実施を判断する前に、休職者の主治医の診断書を確認しましょう。
主治医と産業医の判断基準は異なりますが、主治医の復職判定が出ていない場合、休職者の希望があったとしても慎重になる必要があります。
ただし、産業医は業務内容を把握しているため、「業務に耐えられるか」といった基準で判断が可能です。
主治医の診断書と産業医の意見を基にした総合的な判断を心がけましょう。
復職面談における内容はほとんどがプライバシーに関わるため、その取り扱いには注意をしなくてはいけません。
労働安全衛生法では、面談中に知り得た労働者の秘密を本人の同意なしに漏らしてはいけない「守秘義務」を産業医に課しています。
そのため、面談の内容の多くは事業者であっても知ることができない点に留意しましょう。
ただし、復職面談で産業医が確認する事項についてはある程度決まっているため、次章でご紹介します。
復職面談の具体的な内容は外部に明かされませんが、復職判定の基準とすべき産業医の確認事項は一般的に決まっています。
復職判断を最終的に行う企業・人事担当は、次に挙げる5つの復職可否のポイントが存在することを知っておきましょう。
まず、休職者が主治医の治療方針に従って自主的に通院ができているかどうかは重要です。
通院状況に問題がなければ、休職者の病気やケガの回復状況について、主治医の診断書も参考にしながら判断します。
服薬中の薬に副作用がある場合、業務や通勤への影響の有無についても考慮する必要があります。
休職中は、治療や療養、あるいはメンタルヘルス不調などが原因で生活リズムが不規則になっている可能性があります。
そのため、復職に耐えうる生活を送れているか確認しなければなりません。
たとえば、昼夜逆転することなく適切な睡眠覚醒リズムが整っているか、1日をどのように過ごしているか、といったヒアリングが必要です。
復職のハードルの一つとして、通勤のつらさが挙げられます。
休職中は体力が低下している場合がほとんどのため、問題なく通勤して始業時間に間に合うように職場までたどり着けるかどうかは復職判定の重要な基準です。
体力の問題以前に、ケガや疾患の内容によっては従来の通勤方法から変更する必要も出てきます。
休職前と同条件での通勤が望ましいですが、復職可能な通勤方法の条件について話し合うことも大切です。
メンタルの不調で休職した場合、就労意欲が中途半端な状態で復職させても再発のリスクが高くなります。
休職者の希望で復職面談が実施されるとしても、収入面の不安や周囲のプレッシャーなどの外的要因で復職を急ぐケースは注意が必要です。
復職を希望していることと、本人が「働きたい」と考えていることは必ずしもイコールにはなりません。
やむを得ない復職ではなく、内発的に就労意欲がある前向きな復職かどうかが重要な判定ポイントとなります。
休職の原因が職場や業務内容にある場合、復職時にその問題が解決していなかったり、本人が精神的に克服していなかったりするのは大きなリスクです。
つまり、復職後の職場・業務内容への適応性や、職場環境が改善されているのかどうかも復職の際の判定ポイントとなります。
仮に休職前の業務にそのまま復帰できない場合には、希望の部署・業務内容をヒアリングしたうえで、その結果に基づいた配置転換を行うのが望ましいでしょう。
復職面談は産業医が実施しますが、最終的に復職判断を下すのは事業者です。
そこで、ここまでの確認事項を踏まえて、事業者目線での判断ポイントについて解説します。
復職判断は、主治医の診断書や産業医の面談による意見をもとに総合的に決定するのが大前提です。
判断材料を見落としたり、主治医と産業医からの情報のいずれかに偏った判断を下したりしないように注意しましょう。
とりわけ、主治医の診断書のみで復職判断を下してしまうと、「業務に耐えられるか」という基準で判断されていない可能性が高くなります。
復職面談における確認事項と重複する箇所もありますが、復職判断の際の主なチェックポイントについて以下の一覧を参考にしてみてください。
休職者が復職した場合、再休職の防止を念頭に、以前の状態まで心身の病状が回復できるように就業上の支援や配慮を行う必要があります。
では、具体的にどのようなフォローが必要になるかを解説します。
就業上の環境は、勤務時間や業務量、業務負荷、部署内での人間関係などが挙げられます。
本来であれば、以前の職場への復職が望ましいとされています。
しかし、休職の原因が職場環境にあるかどうかや従業員本人の業務遂行能力なども考慮して、就業上の環境に制限や変更を加える検討が必要です。
従業員の心身への負荷を軽減するために、必要に応じて配置転換や時短勤務、残業の禁止などの条件を設けましょう。
そうすることで、休職していた従業員の就労に対する不安や焦りを緩和でき、企業だけでなく従業員本人も職場環境や労働状況を確認しながら復帰に向けた準備に取り組めます。
職場復帰支援プログラムは、休業中の職場復帰支援の方向性やプロセスなどを定めた企業全体のルールです。
プログラムの内容は内規として企業ごとの裁量で策定しますが、骨組みとしては支援内容を5つに分け、各詳細の取り決めを行っていきます。
その取り決めにしたがって、休業中のケアから復職可否の判断基準の策定や復帰後のフォローアップまで、段階的に実施していくのが効果的です。
休職中の従業員がスムーズに職場復帰できる支援体制として、是非とも取り入れましょう。
職場復帰支援プログラムについての詳細は関連記事をご覧ください。
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職場復帰支援プログラムとは?職場復帰の流れと注意点復職面談は復帰の可否を判断するだけではなく、スムーズな復帰や再休職防止のための検討事項を決める目的もあります。
しかし最終的な復職判断は企業側に委ねられます。
企業・人事担当が従業員の休職から復職までをフォローするためには、産業医などの意見をもとにした日頃の職場環境づくりや、職場復帰支援プログラムをはじめとした支援体制を整備していることが大切です。