女性の健康増進に向けた政策パッケージの概要
「女性の健康増進に向けた政策パッケージ」は、女性のヘルスケアに特化した新しい取り組みの提言であり、5つの切り口から構成されています。
- 1.女性特有の健康問題に関するヘルスリテラシーの向上
- 2.職場における女性の健康増進
- 3.健診・医療体制の充実
- 4.女性の健康ナショナルセンターの創設
- 5.フェムテックの推進
「女性版骨太の方針2023」では、具体的な施策として、生理休暇制度の普及促進のための方策を検討することや、事業主検診での問診に女性の健康に関連する項目を追加することなどがあげられています。
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内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2023」
とくに上記2・3・5の内容は企業の健康経営と関連が深く、参考になる内容となっているため、これら3項目についてそれぞれ詳細を見ていきましょう。
職場における女性の健康増進について
第2項目「職場における女性の健康増進について」は、働く女性の健康問題に焦点を当て、次のような取り組みについて提言しています。
- ・女性の健康について職場の男性や管理職の理解を促進する
- ・社会全体が企業の取り組みを評価する仕組みを作る
- ・健康診断に女性の健康に関する問診項目を追加する
- ・産業医や保健師、看護師などによる支援体制を充実させる
現代では女性の社会進出が進む一方、月経(生理)や妊娠・出産など、女性特有の健康課題が生産性やスキルアップ・キャリアアップに影響する問題も注目されています。
職場でのジェンダーギャップへの理解がないと、周囲から適切なサポートを受けられません。
まずは企業内で周囲の理解・サポートを促進する取り組みが重要となります。
これに加え、政策的な観点で「健康経営優良法人認定制度」のような企業の取り組みを評価するスキーム、医療機関や専門家からの支援など多角的な対策が必要です。
一企業の目線に立った場合でも、女性の活躍は生産性向上の鍵となるため、管理職への研修や女性のキャリアが不利にならないような仕組みづくりに取り組んでいきましょう。
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健診・医療体制の充実について
第3項目「健診・医療体制の充実について」は、第2項目の一部とも関連し、女性の健康問題を健康診断と医療体制からフォローするための提言です。
「女性版骨太の方針2023」では、女性が健康に安心して働けるために、企業の一般定期健診の問診にPMS(月経前症候群)、更年期症状などの項目を追加することが記載されています。しかし、女性の健康関連の項目を追加すれば、その結果が事業所に知られることとなり、女性が抵抗を感じるのではないかといった声もあがっています。
厚生労働省では現在、「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」が開催されており、追加の是非や適切な検診項目、運用方法をめぐって議論がなされています。
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内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2023」
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」
また、健診結果から適切な受診推奨や指導が行えるよう、各都道府県の産業保険総合支援センターでは産業医・保健師への専門研修を行っていくようです。
とくにPMSはイライラ、落ち込み、疲れ、むくみ、頭痛などの不快症状がある一方、生理現象として我慢しがちな女性は多いかもしれません。
政策が普及すれば、上記のような悩みを抱える女性が産業医・保健師へ相談しやすい環境がつくりやすくなるでしょう。
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フェムテックの推進について
第4項目「フェムテックの推進について」は、日本政府が掲げる「女性版骨太の方針」で強調される「フェムテックの推進」を踏襲したものとなります。
フェムテックとは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)をかけあわせた造語で、女性特有の健康課題を技術的に解決するサービスや製品全般を指します。
【製品例】
- ・骨盤底筋トレーニング商品
- ・月経カップ
- ・妊孕力検査キット
- ・デリケートゾーンケア商品
【サービス例】
- ・月経周期管理アプリ
- ・妊娠可能日測定アプリ
- ・オンライン診療・相談サービス
フェムテック産業は国内外問わず拡大傾向にあり、経済産業省によれば2025年時点での国内の経済効果は年間約2兆円と推計しています。
ジェンダーギャップの解消と経済へのプラスの効果を両立できるフェムテックは、今後も研究開発や実証実験が進み、製品・サービスの質やバリエーションが増えていくでしょう。
企業でも、福利厚生の一環として女性社員向けにフェムテックを取り入れるなどの施策を検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ|働く女性の健康増進は社会的に重要な課題
働く女性の健康増進は政府・民間企業・医療機関などが絡む社会的に重要な課題です。
今回ご紹介した政策提言からも、社会的な要請として強まっていることが伺えるでしょう。
企業としては女性の健康増進に取り組むことで、生産性アップやESG経営・SDGsを通した企業価値アップなどのメリットがあります。
まずは人事・総務労務担当者や経営層が理解を深めることが大切です。
産業医を入り口として活用し、女性のヘルスケア分野についてフォローアップしてもらうのも有効なため、視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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