現状も続くコロナ禍において、約7割の企業がリモートワークを実施するようになりました。
働き方が大きく変わった一方、リモートワークの環境特有のハラスメント「リモハラ」が登場し、注目を集めています。
当記事では、リモハラについて該当する事例や発生原因を踏まえ、企業側でできる対策について解説します。
▼参考資料はコチラ
東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」
現状も続くコロナ禍において、約7割の企業がリモートワークを実施するようになりました。
働き方が大きく変わった一方、リモートワークの環境特有のハラスメント「リモハラ」が登場し、注目を集めています。
当記事では、リモハラについて該当する事例や発生原因を踏まえ、企業側でできる対策について解説します。
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東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」
リモハラとは、「リモートハラスメント」の略で、リモートワーク環境で起きるハラスメントの総称です。
2020年に流行した新型コロナウィルス感染症対策の一環として、リモートワーク/テレワークが急速に広まると同時に、新たなハラスメントとしてリモハラが注目されるようになりました。
リモハラは大きくセクハラとパワハラに分類されますが、前提として相手が不利益を被ったり尊厳を傷つけられたと感じる行為は基本的にすべてハラスメントに該当します。
リモートならではの距離感やコミュニケーションの取り方の難しさから、オフィスワーク時とは異なる観点で注意する必要があるでしょう。
また、リモートワーク環境であるかどうかに関わらず、セクハラ・パワハラに関しては国が法整備を強化するなど対策に乗り出しています。
リモハラの観点も含めて、これまで以上に職場で発生するハラスメントに目を光らせなければなりません。
リモハラは比較的新しいハラスメントの形です。
まずは、どういった行為がリモハラに該当するかを知っておきましょう。
以下ではセクハラ・パワハラ・その他に分け、それぞれに該当する可能性がある行為をご紹介します。
セクハラには、性的な言動へ拒否や抵抗した場合に不利益を受ける「対価型」と、性的な言動により精神的な支障を受ける「環境型」の2分類があります。
リモハラにおける「性的な言動」の多くはweb会議やチャットを通して行われ、主に次のような事例が挙げられます。
これらの言動で業務に影響が出るほど不快に感じたり、これを拒絶した際に解雇、降格、減給、不利益な配置転換といった嫌がらせを受けた場合、リモハラに該当します。
パワハラは厚生労働省により6つに類型され、優越的な立場を利用したさまざまな嫌がらせが典型的な事例として広く知られています。
加えて、リモート環境特有の次のような事例もパワハラに該当する可能性がある点に注意が必要です。
プライバシーへ過度に干渉したり、作業する環境について執拗に指摘したりして相手が不快に感じれば、故意であるか否かに関係なくリモハラとみなされる可能性があります。
リモートワーク環境下において、セクハラ・パワハラ以外で特に問題となるのは、「テクハラ(テクノロジーハラスメントもしくはテクニカルハラスメント)」です。
テクハラは、PCやスマートフォンなどのIT機器や、Web会議やチャットアプリなどのITサービスの扱いが苦手な人へのいじめ・嫌がらせです。
ITに関する知識が豊富でスキルの高い人が、そうではない人に対しわざと難解な専門用語で指示を出したり、相手が対応できないと「こんな簡単な操作もできないのですか」などと侮辱的な言葉で叱責したりする行為がテクハラに該当します。
リモートワーク普及とともに、技術知識のない管理職が部下や技術職に叱責される「逆パワハラ+テクハラ」の組み合わせも起きているようです。
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント」
厚生労働省「『ハラスメント基本情報』ハラスメントの類型と種類」
リモハラが起きてしまう原因としては、リモートワークの特殊な環境が関係していると言えるでしょう。
そこで、具体的にどのようなポイントがリモハラに繋がってしまうのかを3つに分けて解説します。
リモートワーク中は多くの従業員が自宅で作業を実施します。
PCでは仕事をしていても、身の回りの空間はプライベートそのものであるため、仕事とプライベートの線引きが難しく感じる場合があるかもしれません。
例えばWeb会議中にカメラに自室が映り込んだり、本人がラフな服装をしていたりすると、心理的な距離感を見誤り、意図せずリモハラ的な言動をしてしまうケースが考えられます。
リモートワークでは、チャットやweb会議等でのコミュニケーションでしか、相手の状況を知ることができません。
特に管理職やマネジメント層の従業員にとって、仕事の進捗や状況が把握しにくくなり、その不安から電話やチャットを使った干渉や指示が増えがちになります。
それが過剰になると相手を不快に感じさせ、リモハラの要因になってしまうのです。
Web会議やメール、チャットなどが主となるオンラインコミュニケーションは、対面とは異なる難しさがあります。
対面では相手の表情や声色、身振り手振りなど、相手の感情を察するうえで必要な情報を多く得られますが、画面越しではその情報がどうしても減ってしまいます。
そのため、自分が意図した通りに相手に伝わらず、軽い注意や冗談が強い叱責や侮辱と受け取られてしまい、結果的にリモハラとみなされる可能性があるのです。
リモハラは従業員一人一人が日々の言動に注意しなければ防ぐことはできません。
では、従業員がリモハラをはじめとしたハラスメントへの意識を高めるために、企業として何ができるのでしょうか。
ここでは4つのポイントをご紹介します。
リモハラはコロナ禍で新たに注目されるようになったハラスメントであり、リモハラという概念をそもそも知らない従業員も多いと考えられます。
まずはリモハラとは何か、どういった行為がリモハラに該当するのかを従業員に理解してもらう必要があるため、社内教育を徹底して実施しましょう。
必要に駆られてリモートワークを導入して以降、リモート時の就業ルールが曖昧になっている職場はまだまだ存在するでしょう。
オフィスでの就業時と同様に明確なルールを設けることで、リモート環境における職場としての意識を高め、リモハラの防止につなげましょう。
リモハラに限らず、さまざまなハラスメントに関して従業員が相談できる環境を整備することは非常に重要です。相談のしやすさも考慮し、担当者を最低でも男女各1名以上設けましょう。
また、リモハラの相談窓口として、産業医の活用も有効です。
産業医にはメンタルヘルスに関する相談もできるため、産業医の役割を改めて確認し従業員の健康管理に活かしましょう。
産業医を設置していない企業は、導入について検討してみてはいかがでしょうか。
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産業医とは?役割や業務内容をわかりやすく解説
リモート環境下でも生産性を維持するため、従業員のマネジメントに迷っている管理職も多いでしょう。
その迷いがリモハラにつながるおそれがあります。
就業ルールだけでなく、リモートでの適切なマネジメントについて、管理職・マネジメント層に向けて教育や研修を行うのも有効です。
充分な対策を講じていても、リモハラが起きてしまう可能性をゼロにはできません。
続いて、実際にリモハラが起きてしまったら、企業はどんな対応をとるべきなのかを知っておきましょう。
ここでは3つのポイントに分けて解説します。
ハラスメント相談窓口にリモハラ被害の相談が来た際、まずは相談者がどのような解決を望んでいるのか、その意向を確認しましょう。
相談者に寄り添ったヒアリングの実施は、リモハラ以外のハラスメントにも共通する重要事項です。
社内教育を徹底していても、個人レベルでは研修の内容を忘れてリモハラ的言動をとってしまう人もいるでしょう。
万が一リモハラが起きてしまっても、再発防止のために社内外の研修やeラーニングなどのプログラムに参加してもらうなど、継続して理解を進めてもらいましょう。
セカンドハラスメントとは、ハラスメントを受けた人が被害について相談したことによって起きる二次的被害です。
たとえば、部下にリモハラの被害を相談された際、「波風立てるような真似をするな」「お前にも責任があるのに図々しい」などと叱責する行為が該当します。
ハラスメントを解決する過程で次なるハラスメントが発生することは、本来あってはいけません。
なるべく中立な立場に相談先を設定したり、管理職への教育周知を徹底することで、セカンドハラスメントの防止に努めましょう。
リモハラは、リモートワーク環境下で生じる比較的新しいハラスメントです。
リモハラを防ぐには、起きる原因や具体的な事例について正しく理解し、企業ができる対策を講じていく必要があります。
働き方が多様化している中で、リモートワーク・オフィスワーク関係なく従業員が働きやすい職場環境を保てるよう、状況に応じた柔軟な対応を心がけましょう。