厚生労働省は肝炎の重症化予防の一環として「民間企業などの健康診断で肝炎ウイルス検査を受け、陽性と判定された人について、2019年度から初回の精密検査の費用を助成する」との方針を固めました。これまで助成対象は、自治体が実施するウイルス検査で陽性判定を受けた人に限られていました。
陽性判定が出ても早期に精密検査や治療を受ければ、慢性肝炎、肝硬変、肝がんといった重症化を予防できることから、厚労省は民間企業の健康診断などを通じて肝炎ウイルス検査を受けるよう呼び掛ける取り組みを開始しています。今回の方針はその一環として打ち出されたものです。
ウイルス性肝炎とは
ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスに感染することで肝臓の細胞が壊れていく病気です。感染していても自覚症状はほとんどないため、肝炎ウイルス検査を受けない限りわからず、気づかないうちに慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに進行している場合があります。
肝臓がんの原因の約8割をB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスが占めています。肝臓がんの5年生存率は他のがんと比べてあまり高いとは言えません。
肝炎ウイルスは
- 1.正しい知識を知る
- 2.検査により発見する
- 3.早期発見で治療する
ことが肝心です。
都道府県、政令市、東京23区のウイルス検査は原則無料で受けられます。陽性と判定された人は初回の精密検査も無料で受けることができましたが、今回の方針が実現すれば、19年度以降は職場の健康診断も含む民間の健康診断で検査を受けた人も精密検査で助成を受けられるようになります。
事業主や医療保険者へのお願い
職場での健康診断に肝炎ウイルス検査を導入しましょう。職場での実施が定められている定期健康診断の必須項目に、肝炎ウイルス検査は含まれていません。必須項目である肝機能検査とは別に、肝炎ウイルス検査を受けない限り、肝炎ウイルスに感染しているかどうかはわかりません。たとえ肝機能検査(AST、ALTなど)の結果が正常であっても感染している可能性があります。
健康診断時に、他の血液検査と一緒に測定できるように、肝炎ウイルス検査の項目を加えてください。基本的には一度の検査で十分です。これまでに検査を受けたことがない従業員に肝炎ウイルス検査を実施することで、感染の有無がわかります。検査方法は採血のみなので通常短時間で済み、数週間で結果が出ます。
肝炎ウイルスの主な感染経路には「ウイルスが含まれる血液を輸血した・注射器を感染者と共有した・感染者の血液を傷のある手で触った・感染者と性交渉をした」などが挙げられますが、感染原因の約半数は不明です。自分と家族のため、輸血や大きな手術をしたことがない人も検査を受けましょう。