「アサーティブコミュニケーション」という言葉を聞いたことはありませんか。近年、社内のコミュニケーションを改善する方法として「アサーティブコミュニケーション」が注目されています。上司から部下、部下から上司、同僚同士など、あらゆる関係で実践が可能です。今回は、アサーティブコミュニケーションの実践方法や、どのように社内に導入していけばよいか、具体的な事例もご紹介します。
アサーティブコミュニケーションとは?例や実践方法を紹介
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アサーティブコミュニケーションとは
アサーティブコミュニケーションとは、一方的に自己主張するのではなく、互いの立場や意見を尊重しながら意見交換をすることを指します。そもそもアサーティブは自己主張するという意味であり、アサーティブコミュニケーションは適切な方法で自己表現することをいいます。
アサーティブコミュニケーションの重要性
近年、アサーティブコミュニケーションは、企業導入で注目されています。それは、アサーティブコミュニケーションを社内で実践することでコミュニケーションが活性化され、いわゆる「風通しの良い会社」になる可能性が高まるからです。伝達ミスなどによるトラブルの軽減につながるとともに、活発な意見交換によって生産性の向上にもつながるでしょう。
また、適切なコミュニケーションによって良好な人間関係を築くことができれば、ストレスが減りメンタルヘルスの改善にもつながると考えられます。
アサーティブといった3つの自己表現タイプの特徴
アサーティブコミュニケーションを実践するためには、まずは自分のコミュニケーションの種類を知ることが大切です。ここでは、アサーティブ、ノンアサーティブ、アグレッシブ、それぞれの特徴をご紹介します。
アサーティブの特徴
アサーティブは、相手の意見を尊重しながら自分の意見を適切に伝えることができる、理想的なタイプです。主に以下のような特徴があります。
・雰囲気を察して行動できる
・相手の思いを尊重しながら、自分の意見を伝えることができる
・対話をしたうえで結論を出すことができる
ノンアサーティブの特徴
ノンアサーティブは、相手の意見を優先してしまうタイプのことです。「自分の意見を主張する」という意味のアサーティブに「ノン」がつくことで真逆の意味になるのです。主に以下のような特徴があります。
・自分の感情を押し殺す傾向にある
・自己主張が苦手で、本心を見せない
・言い訳をしてしまう
アグレッシブの特徴
アグレッシブは、相手の意見を聞かずに自分の主張ばかりを押し通そうとするタイプのことです。攻撃的な態度で接すること以外にも、相手を無視することもこのタイプに当てはまります。主に以下のような特徴があります。
・高圧的な態度で接する
・自己主張を押し通す
・相手を無視する
アサーティブコミュニケーションで大切な4つの原則
アサーティブコミュニケーションを実践するためには、次の4つの原則を守ることが大切です。
主張を押し通そうとすることも、抑えすぎることもアサーティブコミュニケーションを阻むことになるため、まずは「誠実」が求められます。自分に対しても相手に対しても、嘘をつくことなく誠実な態度をとる必要があります。
次に「率直」です。曖昧であったり遠回しだったりする表現ではなく、自分の意見を率直に伝えることが大切になります。また、「対等」も重要な要素です。上司と部下のように立場の違いに影響されることがないよう、対等な姿勢で相手と向き合う必要があります。
最後に「自己責任」があります。言い訳をすることなく、意見交換によって出た結論に対して、自分にも責任があるという意識をもつことが大切です。
アサーティブコミュニケーションの実践に役立つDESC法
アサーティブコミュニケーションを実践するために、DESC法というコミュニケーションスキルをご紹介します。DESCは、Describe(描写)・Explain(説明)・Specify(提案)・Choose(選択)の頭文字を表しており、この方法を利用すれば、次の4段階に分けて自分の気持ちを伝えることができます。
1.Describe(描写)
解決したい課題の状態や相手の行動などを客観的な視点で、事実を伝えるようにします。自分の感情や憶測、相手への評価などを入れないようにしましょう。
2.Explain(説明)
事実に対する自分の気持ちや意見を相手に伝えます。ただし、感情的になり相手を責めることは避け、相手の気持ちを思いやり、誠実さを心がけながら伝えることが大切です。
3.Specify(提案)
現状の問題点に対して、具体的な解決策を伝えます。あくまでも「提案」なので、自分の意見を押し付けたり命令口調になったりしないよう心がける必要があります。
4.Choose(選択)
自分の提案への相手の反応を確認して、行動を選択します。自分の提案が受け入れられなかったときには、代わりの案を提示しましょう。相手の反応に応じて対応できるよう、選択肢を複数用意しておくことが大切です。
アサーティブコミュニケーションの例
実際に、どのようにアサーティブコミュニケーションが行われることがあるか、いくつか事例をご紹介します。
上司から部下への対応例
上司から部下に対するコミュニケーションでは、高圧的な態度で接し、自分の意見を押し通そうとするケースも少なくありません。部下のことを思いやりながら、どのようにしてほしいか、自分の意見を誠実かつ具体的に伝える必要があります。
たとえば、部下に依頼した資料作成が、期日までに提出されなかったとします。その際に「なぜ期日までに提出しなかったのか」と責めても部下は萎縮してしまうだけです。
アサーティブコミュニケーションでは、たとえば以下のような対応が有効です。
・描写:今日の12時までの資料作成がまだ提出されていませんね。
・表現:忙しそうだったので、間に合うか気になっていました。
・提案:期日に間に合わないことがわかった時点で相談してほしいです。
・選択:業務のサポートの必要があれば教えてください。
部下から上司への対応例
部下から上司へのコミュニケーションでは、遠慮や叱られることを避けるあまり、自分の状況や意見を上手に伝えられないケースも多いでしょう。ですが、上司への相談を適切に行わないことで、余計なトラブルの発生につながってしまうかもしれません。
たとえば、上司に依頼された資料作成が期日までに提出できないとします。そのような場合には、以下のような対応が有効です。
・描写:今日の15時までの資料作成が間に合いそうにありません。
・表現:クライアントにも迷惑がかかり、申し訳なく思っています。
・提案:誰か手があいている人がいたら、サポートをお願いしたいです。
・選択:サポートが難しければ、期日を1日伸ばせないか交渉してみます。
同僚同士での対応例
同僚同士でのコミュニケーションでも、相手の立場や気持ちを尊重しながら自分の意見を適切に伝えることが大切です。
たとえば業務の進め方について話し合っている際に、皆が合意している内容に違和感を抱いているとします。そのような場合は、以下のような対応が有効です。
・描写:その業務の進め方だと、4時間程業務時間が増えそうです。
・表現:残業が必要になりそうで、懸念しています。
・提案:人員を1名増やしてからスタートするのはいかがでしょうか。
・選択:増員が難しければ、ほかの進め方をもう1度検討しましょう。
【補足】3Dを意識する
アサーティブコミュニケーションを意識するためには、3D(でも、だって、どうせ)と呼ばれる言葉を使用しないことも大切です。相手を否定しないよう意識することで、会社全体のコミュニケーションの改善につながるでしょう。
まとめ
社内のコミュニケーションを改善するためには、アサーティブコミュニケーションの実践が有効です。ご紹介した例を参考にして、社内に取り入れてみることをおすすめします。まずは、今回ご紹介したDESC法を意識したコミュニケーションを行ってみましょう。
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